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2019年11月20日のマーケット・コメント(2)

「香港人権法案」米上院で可決-中国の反応に注目(補足)

 

米上院での可決を受けて、中国政府と香港政府が声明を発表しました。中国政府は「法案が成立した場合、報復する。米国は香港への介入を中止するよう求める。」、香港政府は「法案には根拠がなく不要で、米国と香港の関係や米国の利益に悪影響を及ぼすだろう。極めて遺憾。」というものでした。今回の声明のポイントは「法案が成立した場合」でしょう。上下院とも全会一致での可決で、法案成立は確実ですが、成立までにはまだ手続き上の時間があるからです。

 

法案成立のために今後必要な手続きは、まず上院と下院でそれぞれ可決した法案の一本化です。(下院案と上院案では若干の違いがあるため)その方法は2つあり、下院が上院案をそのまま受け入れるか、上下両院で法案の一本化作業を進めるか、どちらかです。その若干の違いが何なのか把握できていませんが、下院が下院案にこだわる可能性は低いと思われ、下院が上院案を受け入れる可能性が高いと思われます。一本化された後に法案が大統領宛てに送付となります。

 

次の手続きは大統領の署名で、それで法案成立となります。もし大統領が拒否権を発動した場合、法案は上院に戻され、3分の2以上の賛成で大統領の署名がなくても法案成立となります。今回は全会一致での可決なので、3分の2以上の賛成は確実であり、「トランプ大統領は上下院とも全会一致で可決した法案に拒否権を発動した」という不名誉な事実だけが残り、法案自体は成立することになります。したがって、トランプ大統領に拒否権発動という選択肢はないでしょう。

 

法案送付されたのち、大統領が拒否権発動できる期間は日曜日を除く10日以内です。10日以内に拒否権が発動されなければ、大統領は署名しなくても署名したと見なされ、法案成立となります。つまり、トランプ大統領が「米中部分合意」を獲得するためには、法案送付後10日以内までに、合意に達して合意署名する以外に選択肢はなくなったのです。法案の一本化にはそれほど時間はかからないと思われることを考えると、今月中にも法案送付となり、12月前半にも署名期限を迎えることになりそうです。また12月15日には1,600億ドルに対する関税発動も予定されており、その取り扱いも決める必要があります。

 

米中部分合意という政治成果の獲得を優先して中国に配慮し、トランプ大統領は香港問題への言及を避けてきました。中国政府はトランプ大統領の心中を見透かして、大規模な制裁関税撤廃を迫ってくるでしょう。もしトランプ大統領が、部分合意を獲得するために誰の目にも譲歩しすぎの関税撤廃を決定したら、それは合意を獲得したというプラスの評価ではなく、政治家として大きなマイナス評価となり、大統領選挙にネガティブに影響します。「香港人権法案」の成立が避けられない状況になった以上、トランプ大統領には部分合意獲得をあきらめる、という選択肢しかなくなりました。

 

市場ではまだ上記はほとんど織り込まれていない様ですが、織り込みが始まるまでにそう時間はかからないと思います。まずは今日の米国市場の反応に注目です。