日本株の中期見通し-従来のシナリオを6カ月後ろ倒し
私は日本株の中期見通しとして、年初に年末の日経平均予想を9,000円として、各メディアのアンケートの回答としました。下落を予想したのは、
「インフレ抑制のために金融引き締め策を取らざるを得ない新興国の景気が、一段と悪化することからの将来の業績懸念」
「米国QE3縮小から終了により、投資資金が新興国から米国に引き上げられ、新興国景気悪化に拍車がかかる懸念」
「中国で、構造要因による経済成長減速が継続する懸念」
「所得が伸びていない中での消費増税となり、日本の消費者の倹約志向の高まりの影響からくる将来の業績懸念」
「アベノミクス第1の矢である積極金融緩和が景気浮揚に繋がらないことが判明すること」
「アベノミクス第3の矢である成長戦略が期待外れの内容になること」
「すでにオーバーウェイトの水準まで日本株を買いました中長期外人投資家にとって、何らかの懸念からオーバーウェイト(上昇にベット)をニュートラル(リスクなし)に引き下げるハードルは高くないこと」
以上の理由によるものでした。
また、4-6月頃には「中長期外人投資家が日本株の削減を始め、明確に下落が始まるのは、最も早くて8月、最も遅くても11月」と予想してきました。
今後の展開(シナリオ)や、上記の理由には全く変更ありませんが、
「明確に下落が始まる時期は11月、日経平均は13,000円程度まで下落した後、政府の景気対策や日銀の追加緩和が決められ、年末に14,000円程度まで反発、2015年6月末には日経平均9,000円まで下落」
と時期の予想を変更します。
その変更の理由は、
「企業業績懸念は7-9月期業績発表(10月終わりから11月初め)後にならないと出てきそうにないこと」
「消費増税の影響が長引くことによる日本のマクロ統計の予想外の弱さが市場に強く認識され、強気派の意見を払しょくしてそれが織り込まれるためには、7-9月期すべての(9月までの)月次統計が必要だと思われること(短期間だと強気派は「一時的」「特殊要因によるもの」と主張し続ける)」
「所得が増えていない中で、円安によるインフレが果たして経済を活性化させるのか、という疑念が、最近の一層の円安進行で高まっていくと予想されること」
「QE3は10月29日に終了の見通しで、その後は利上げの時期に完全にフォーカスされ、世界的に米国の早期利上げリスクが取り沙汰されやすくなること」
以上です。
その他、突発的なリスク要因として、
「9月18日のスコットランド独立住民投票」(もし賛成多数となった場合、ポンドの取り扱い、英国債務の引き継ぎ問題、さらには他の地域の独立運動加速による混乱など、様々な不透明要因が浮上します。)
「10月5日ブラジル大統領選挙」(ブラジルはワールドカップの恩恵があったはずの4-6月期に実質GDP成長率はマイナスになっています。混乱が起こりやすい状況です)
「10月末実施を目指しているウクライナ議会選挙の行方」
「11月4日の米国中間選挙」(現在は上院は民主党多数、下院は共和党多数ですが、もし上院でも共和党多数になれば、オバマ大統領に対する弾劾裁判が提議される見込みです。)
8%から10%の消費増税ですが、どんな経済統計が出てきても安倍首相は景気対策とセットにする形で、12月前半に増税を決断すると思います。景気対策の内容はこれまでと同様に、公共投資中心としかなりようがなく、消費者全般の購買力浮揚効果は乏しいでしょう。また黒田総裁が追加緩和を決断するための条件は、以前と変わらず日経平均が13,000円程度(高値から20%下落)までの下落だと考えています。景気対策も追加緩和も、それを受けて日本株を買い増す中長期外人投資家は限定的で、主な買い手は短期投資家(の買い戻し)になるでしょうから、株価押し上げ効果は短期的でしょう。