金正日死去
皆様ご存じのとおり、本日正午ごろ北朝鮮の金正日の死去が伝えられ、直後の市場の反応は、株安、ドル高となりました。(以下敬称略です。)
北朝鮮の今後の展開を考えてみたいと思います。
後継者は三男の金正恩にすでに決定していますが、後継者として決まってからまだ日が浅く、権力層全体を掌握しているかどうかは疑問です。リーダーシップやカリスマ性が十分でない金正恩が恐れるのが、北朝鮮国内での内乱につながるような権力闘争や軍部による実権掌握でしょう。また、北朝鮮国民全体が、最高指導者の交代によって生活がより一層悪化した、と感じることも大きなリスクでしょう。
それらに対する対応として考えられるのは、2010年に韓国への砲撃事件で見せた様な、韓国に対する軍事的挑発行動だと思います。軍部の関心を、国家権力掌握ではなく、韓国という敵国との戦闘準備にする、ということです。漁船の不法操業の問題で北朝鮮の支援国である中国と韓国の関係は悪化しており、中国からの抑止圧力はないでしょう。また、米国は軍事予算を増やせない状況にあることを利用し、軍事的挑発行動の中止と引き換えに、経済制裁緩和などの交渉再開を図ってくるでしょう。
米国は、ミャンマーがそうだったように北朝鮮でも、最終的な民主化への第一歩として、最高指導者の世襲を終わらせるために、軍部による実権掌握を願っていると思われ、金正日死去後の北朝鮮国内情勢をある程度時間をかけてモニターした後に、しかるべき策を講じてくることでしょう。その際には、北朝鮮の中国からの引き離しも狙ってくるでしょう。
ただ、いずれにしろ状況が短期的に急変する、という性質のものではないと思われ、市場への影響は今日明日にも解消される、と予想します。むしろ、今回の金正日死去が年内のポジション整理を加速させ、目先の底をつけるきっかけになるのではないか、と考えています。
フィッチによるフランス国債格下げに、S&Pやムーディーズが追随してくるとなると、世界的に株価は更なる下落となると思いますが、少なくとも年内にそれが起こるとは思えず、年内の相場見通しは、前回お伝えしたものから基本的に変更はありません。すなわち、今日の安値が当面のボックスの下限の可能性が高い、と見ています。