フェーズ・チェンジ
8月の株式市場の下落は以下の3つの可能性があります。
1. 上昇フェーズの中での調整(いわゆる中間反落)
2004年5月、2010年5-8月と同様。
2. 高値もみ合いフェーズに移行
2006年5-6月と同様。
3. 高値もみ合いフェーズを飛ばして下落フェーズに移行
下落フェーズの始まりは前回は2007年8月
結論から申し上げますと、1.の可能性は極めて低く、2.か3.で、2.よりも3.の可能性の方が高い、と考えています。
1.ではない理由として、過去10年くらい振り返った時、1999年-2000年のいわゆるネットバブルの時は、ネット企業や通信会社が無理をして過剰設備投資を行い景気のけん引役になりました。その後、ネット企業や通信会社は大きなツケは払わされました。リーマンショック前の前回の景気回復は、サブプライムなどの住宅バブルを金融機関が作り出し、金融機関は無理をしたツケを払わされました。リーマンショック後の現在の状況は、民間部門で景気をけん引している分野が無く、公的部門(政府や中央銀行)が無理をして景気を支えてきました。ただ、そのために公的部門の財政は痛み、もうこれ以上やれることは限らており、一方で新興国はインフレ問題を抱えているので景気拡大を加速させられる状況ではないということを8月に一気に織り込んだのだと思います。
世界景気の拡大の行き詰まりが顕在化するにはまだしばらく時間がかかると思われますが、市場が一旦実際に織り込んだ動きをしてしまった以上、この問題が消えることは無いと思います。
したがって1.の可能性はほとんどない、という結論に至ります。
2.か3.かの決め手は、追加金融緩和策なしに、米国景気の自律的回復が加速するかどうか、だと思います。回復が加速するようであれば2.の可能性が高まっていきます。同時に新興国でのインフレ懸念の鎮静化も必要です。ただ、これまで見られなかった米国景気の自律回復の加速や、景気拡大が維持されている中での新興国でのインフレ懸念の鎮静化が今後見られる可能性は低いと思われるため、現段階では2.よりも3.の可能性が高いと思わざるを得ません。様々な良くない副作用を承知で、追加金融緩和を「実施」してしまったら、3.に決定となります。追加緩和実施初期には株式市場は上昇するかもしれませんが、そこは絶好の売り場となってしまうでしょう。
3.だとすると、日経平均の2000年の高値が約21,000円、2007年の高値が約18,500円だったのに対し、今回の高値は2010年4月の約11,400円にとどまる、ということになり、いくら日本企業の国際的な平均的相対地位が低下しているにせよ、いくらなんでも低すぎるのではないか、という違和感を覚えます。
しかし、NYダウは2007年の高値が約14,200に対し2011年の高値は約12,900、ドイツのダックスは2007年の高値が約8,100に対し2011年の高値は約7,600、イギリスのFTは2007年の高値が約6,750に対し2011年の高値は約6,100とおおよそ2007年の高値から5-10%下のところまで2011年の高値は迫っています。国家の財政が傷んだことなどを考えると、前回高値の5-10%下で今回の高値をつけた、ということになっても違和感はありません。
いずれにせよ、たとえ3.だったとしても、最低でも日経平均で10,000円手前位までの戻りが、9月10月であると思います。その際に戻るのは「業績に全くケチがついていないのに」8月に大きく売られた、「外人好みの銘柄と内需成長銘柄(主に新興市場銘柄とかつて新興市場にいた銘柄)」だと思います。
今は戻りを取りに行き、日経平均で10,000円手前まで戻ったら、2.か3.かを見極め、3.の可能性が高いと思われたら、外人好みの銘柄をショートで取ることを考え、2.の可能性が高いと思われたら、日経平均で最大11,000円までの戻り(為替の円安進行などベストケースでは最大12,000円)はあり得るので、高値圏で急落するまではロングでついていく、ということになるでしょう。
見極めるうえで重要な注目点として、10月半ばから発表される米国主要企業の7-9月期の業績発表や10-12月期のガイダンスで「時間の問題で企業業績がピークアウトしてしまいそう」だという内容かどうかです。これまで企業業績のみが株価を支えてきたわけですから、もし業績の先行きピークアウト感が出てしまったら、3.に決定ということになります。
日本企業の今期業績は地震の影響で歪められてしまっているため、参考にはなりません。ただ、地震の影響で製造業各社の今期業績見通しは、おおよそ上期1に対して下期2という利益構成になっており、ただでさえ下期偏重の業績見通しを中間決算発表時点で上方修正してくる企業はほとんどないと思われ、株価の押し上げ要因にはならないでしょう。