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2011年9月26日のマーケット・コメント

反転のきっかけとタイミング(2)

 

皆様ご存知のように、FOMCの後米国株式市場は、2日間の下げとしてはリーマンショック直後以来の記録的急落となりました。その後のG20でも問題意識は共有されましたが、予想通りなんら具体的対応策は示されませんでした。これでますます市場は、欧州に問題があるのは誰の目にも明らかだが、政策にもはや打つ手なしなのか、という意を強くしたように思います。現在の市場センチメントは、企業業績に大きな問題がないのであれば確かに今の株価はやはり割安と思うが、多数派の投資家が現状のリスク回避方向の投資行動を変えない限り、どこまで下がるかわからない株式に手は出せない、ということだと思います。

しかし、逆に言えばひとたび市場センチメントが転換し、株式市場がボラティリティ低下を伴う上昇(比較的緩やかな上昇が継続する)を見せれば、買い需要に回る待機資金はかなり準備されてきている、ともいえると思います。

 

先日のコメントで、日米欧の中央銀行が無制限にドルの短期資金を供給することに合意した、というのは注目に値する政策だとお伝えしました。ここで付け加えたいのは、FOMCで短期債を売却し長期債を購入するいわゆる「ツイスト・オペ」が発表され、これで実質的な追加緩和策が完成した、ということです。FRBが長期債を買い短期債を売る一方で、FRBを含む日米欧の中央銀行が短期のドル資金を供給するわけですから、ドルはあわせてみれば短期も長期も供給ということになります。ひとたび株式市場が反転の動きを見せたとき、この実質的追加金融緩和策が上昇持続の大きなエネルギーになる、ということに異論を持つ人は多くないでしょう。

 

問題は、何をきっかけに株式市場のセンチメントが転換するか、です。いろいろ想定はできますが、はっきりと予測することはできません。ですが、8月9月にここまで悪化したセンチメントが転換するきっかけなわけですから、多くの市場参加者に「わかりやすい」ものになるのか、あるいはきっかけそのものはそれほどわかりやすくはなかったが、その後の値動きがボラティリティの低下を伴う上昇となり、値動きそのものがセンチメントの転換につながるのか、いずれかだと思います。

 

したがって、はっきりとした「きっかけ」もしくは「現象」が見られるまでは、大きくリスクを取らず、ひとたびセンチメントが転換したと判断されたら、全力でリバウンドを取りに行く、というスタンスが一番割りのいい投資行動だと思います。(「リバウンド」と書きましたが、それが起こった時には、少なくとも市場参加者の半数以上が「これで嵐はおさまり、市場のトレンドは上昇に転換した」と考え、「どうせ下落過程でのリバウンドにすぎない」と考える人はごく少数になっていることでしょう。今それを言うのは早すぎますが、周りの明るい雰囲気に流されずに、冷静な状況判断が必要です。)

 

たとえ、2011年8月が「下落」フェーズへのフェーズチェンジの月だったとしても、戻りらしい戻りがないまま最安値まで下落する、という展開は考えられません。ただ、8月後半にイメージしていたよりも、戻りがないままここまできていることも事実です。ここは、もしかしたら明日にもセンチメント転換かもしれないが、最長11月いっぱいくらいまで、いわゆる「底値形成」の状態が続くかもしれない、という時間軸での覚悟を持って、次のリバウンドに「備える」のではなく、次のリバウンドを「待つ」という姿勢が大切だと思います。

 

個別銘柄の値動きや各種データから足元の需給を考えると、8月から9月半ばまでの外人投資家の問答無用のリスク回避の株式売却はピークを越えたと思われる一方で、国内の年金や投信マネージャーが景気敏感株からディフェンシブ銘柄に資金シフトしていることが推測されます。9月半ば以降、いかにも外人投資家が多く持っていそうな好業績大型景気敏感株は売られ方が以前よりもマイルドになってきた一方で、外人投資家はあまり持っておらずもっぱら国内投資家が持っていそうな好業績中小型景気敏感株の売られ方の激しさが止まっていません。おそらく、年金顧客に四半期運用報告をする9月末のポートフォリオを意識しての動きだと思われます。

主要な国内投信の8月末のポートフォリオを見ると、意外にディフェンシブ・シフトしていませんでした。ここからうかがえるのは、国内ロングオンリー・マネージャーの8月のパフォーマンス(彼らの評価は対TOPIXでの相対パフォーマンス)は相当苦戦し、9月もその傾向は変わっていなかったはずで、10月に年金顧客のところに訪問して7-9月期の運用報告をする際に「8月9月は想定以上のことが起こりパフォーマンスは苦戦してしまいましたが、9月末時点ではすでに防御的なポートフォリオに変更しており、市場環境の変化に対応できています」と言いたいのだということです。

 

従いまして、現在もしポジションを取るのであれば、センチメント転換の際に外人投資家が真っ先に買うであろう好業績大型景気敏感株をロングにし、まだ国内投資家の売りが残っている好業績中小型景気敏感株をショートにするというポジションを当面続け、「これだ」と思うきっかけがきたならば、ポジションを好業績バイアスへと変えて相場の上昇を取りにいく、ということでしょう。