ミョウジョウ・アセット・マネジメント株式会社の運営する会員制金融情報サイトです。

2013年1月9日のマーケット・コメント

「アベノミクス」を支持する米国の狙い-本には書けないシナリオ

 

以下のシナリオは私の想像であり、それを裏付ける証拠はなにもないことを最初にお断りしておきます。

 

昨年8月に安部首相が自民党総裁候補として、露出度が急激に上がり、9月の自民党総裁選で勝利して以来、安部首相の過去は自信に充ち溢れているように見えます。11月14日に野田前首相が衆議院解散に言及すると、そのすぐ後にゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント会長のジム・オニール氏が「We Want Abe」という、アベノミクス支持のレポートを発表しました。その後、円安ドル高が進んでも、米国は容認を続けています。普通だったら、これだけのスピードで為替が動けば、スピードに対する警戒論くらい米国から出てくるのが妥当だと思うのですが、そうなっていません。

 

ここからが私の想像なのですが、おそらく安部首相は自民党総裁選前に、米国からの支持を取り付けているのではないか、と思います。以前首相を経験したわけですから、米国とのパイプを独自に持っていても不思議はありません。おそらく安部首相は米国と

「近いうちに衆議院選挙があり、政権が交代します。私が自民党総裁になり、衆議院選挙の後に首相になったら、普天間やオスプレイの問題処理はもちろん、TPP参加もできる限り前向きに取り組みます。その代わり、景気対策として円安誘導を行うことを了承下さい。」

という合意したのではないでしょうか。米国の後ろ盾を得て、安部首相は自信に充ち溢れた顔になっているのではないでしょうか。

 

ここで考えたいのが、米国の狙いです。「日本は米国の重要な同盟国であるため、日本がこれ以上国力を落としてもらっては困る。円安誘導して日本の景気を回復させ国力を強めて中国に対抗してもらう」などということが狙いとは思えません。「中国への対抗」は確かに米国にとって重要でしょう。シェール資源活用が可能になったことで、米国外交における中東政策の重要度は1段階下がり、逆に中国政策の重要度は上がっていると思われるからです。

 

民主党政権時代に、普天間問題をはじめ、米国は相当に不愉快な思いをしました。対中国政策において日本の存在は米国にとって重要であることは間違いありません。だからこそ、米国の思い通りにならない日本は、米国にとって大きな問題なのです。米国は日本を「配下」に置きたいはずです。

 

米国は、もし円安が進行すれば、日本では輸入物価上昇によるコストプッシュ・インフレが起こり、それは長期金利の上昇につながり、日本の財政危機が近付くことを理解しているはずです。財政危機になったら日本は米国に支援を求めてくるようになり、日本を完全に支配下における、というシナリオを持っているのではないでしょうか。したがって、安部首相の円安誘導策は、日本が自ら財政危機に近付いていくわけですから、米国にとっては願ったりかなったりなのではないでしょうか。

 

円安進行によりインフレが起こり、長期金利が上昇した場合、国内金融機関だけでは国債の消化ができなくなることが想定されます。金融機関はどこもALM管理(資産と負債のリスク管理)をしていますので、金利上昇によって保有債券に一定以上の評価損が発生した場合、債券保有残高を増やせなくなるからです。その段階で、日銀法改正して日銀の国債直接引き受け、というようにはさすがにできないでしょうから、行き過ぎた円安対策と国債消化という一石二鳥を狙って、日本は米国に国債購入をお願いするのでしょう。

 

米国は、表向きは「同盟国日本の窮地であれば、喜んで支援する」、本音は「国債購入したらこちらは債権者になり、後々に債権者として色々口を出せるようになる」ということで、支援に応じるのでしょう。その後さらに円安進行、金利上昇となった場合、米国は「このままでは我々が貸した金(購入した日本国債)が返ってくる見込みが立たない。世界の金融システムも混乱する。さっさとIMFに救済要請をして、財政の健全化を図れ。」となり、日本は晴れて米国の支配下となるのでしょう。ただ、それは官僚や不要な医療補助を受けている高齢者等を除けば、多くの日本国民にとってまさに「維新」となり、再生への道の始まりとなるのではないでしょうか。