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2013年3月26日のマーケット・コメント

キプロス救済合意

 

キプロスの財政救済策に伴う銀行の処理スキームが固まりました。当初は、預金保険の対象である10万ユーロ以下の預金にも負担を求める内容でしたが、今回の合意では10万ユーロ以下の預金は全額保護されることになりました。その代わり、キプロス第2位の銀行であるキプロス・ポピュラー銀行は整理され、預金保険の対象外である10万ユーロ以上の預金と優先債などの無担保債権については、ほぼ全額が失われることになりました。またポピュラー銀行の預金を引き継ぐキプロス最大手の銀行であるキプロス銀行についても、預金保険対象外の最大40%が失われることになりました。

 

報道されている通り、キプロスの銀行預金のかなりの部分(約40%)がロシアの法人・個人です。しかしロシア政府は今回の合意案を容認することを示唆しました。ロシア政府にとってみれば、キプロスに大口の預金を保有するロシア法人・個人は、ロシア政府からの課税を逃れるという意味でも、マネーロンダリングの疑いがあるという意味でも、将来反政府勢力の資金源になる可能性があるという意味でも、保護する対象ではない、という事なのでしょう。むしろ彼らの資金が失われることはロシア政府にとっては望ましいことであり、またこれを契機に、ロシア国外に資金を持ち出すことにブレーキがかかることを望んでいるのではないでしょうか。

 

問題は、今回のキプロスのスキームが他のユーロ加盟国にも適用されるかどうか、です。ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)議長のダイセルブルーム・オランダ財務相は「今回のキプロス救済スキームは、今後他のユーロ加盟国にも適用されうるひな型だ」と発言し、ユーロが急落しました。その後「今回のスキームは、キプロスという特殊な国に限ったことだ」と火消しに回り、ユーロの下落はとりあえず止まりました。

 

3月18日のコメントで、

「経済規模の小さなキプロスだけにとどまらず、スペインやイタリアなど経済規模の大きなユーロ圏財政問題国にも適用される、ということになったら世界的経済混乱に発展してしまいますが、それは誰もが理解していることであるためその可能性は小さいでしょう。また、仮にそうなるにしても、その方向性が打ち出されるのはまだまだ先のことでしょう。」

と書きました。

この考えは変わっていません。最大債権国のロシアが容認している以上、キプロス問題が短期的にこれ以上市場に悪影響を及ぼすとは思えず、適用拡大論が出てくるのは、もしあったとしても大分先の話でしょう。しかしながら、ユーロが買われにくくなったのは間違いないので、ユーロ円のポジションをお持ちの方はポジションクローズしてドル円に乗り換えることを検討してはいかがでしょうか。

 

ドル円は昨日NY時間に、ユーロ急落に引っ張られ93.53円まで調整しました。直近のドルの安値である93.70円を一時割り込んだ格好になったわけですが、その後急激に戻りましたので、これで調整終了の可能性が高いと思います。一方、日経平均は高止まっており、調整十分とは言えません。25日線(現在11,964円)にせまるくらいの値幅調整があるか、あるいは25日線が上昇してくるのを待つ形で2週間ほど日柄調整でもみ合うか、いずれかがないと買いにくい状況です。ただ、4月3、4日には新体制初の日銀金融政策決定会合があり、そこで「異次元の」金融緩和が打ち出されると思われるため、買いポジションがまだ十分ではない方は、あまりベスト・タイミングを狙い過ぎない方がいいように思います。4月からGW明け位が「アベノミクス祭りのメイン・イベント」となりそうなので、メイン・イベントにはきっちり参加して、それが終わったら荒れる前に帰る、とすべきでしょう。