業績発表内容の印象と留意点
先週半ばから業績発表が始まりました。まだ半数も発表されていないわけですが、昨日発表までの内容についてコメントします。
まず全般的な印象ですが、私の予想通り「会社はかなりの回復見通しを発表してくるが、期待感が相当高まっているコンセンサスに沿った内容か、コンセンサスには届かないか、どちらかになる」となっています。中には、キャノンやファナックのように、「明らかにコンセンサスよりも悪い」というものも散見されます。当然と言えば当然ですが、そのような発表を受けて、株価は動かないかそれなりに下落したかどちらかで、明確に上昇した銘柄はこれまで株価が全く上昇していなかった日本電産くらいです。
留意点ですが、会社見通しが下期偏重になっている銘柄は、下方修正リスクが高い、ということです。例えば昨日発表の富士通です。会社の通期の営業利益見通しは1400億円で、コンセンサスの1408億円とほぼ同水準です。ただし上期、下期に分けてみると、会社の上期見通しが100億円の赤字ですから、上期100億円の赤字、下期1500億円の黒字、ということになります。このことから、
1.業績の為替感応度はほとんどない(2012年度上期の営業利益は77億円の黒字でした。売り上げは2兆718億円で、2013年度上期見通しの2兆500億円とほぼ同額でした。円安メリットがあるのであれば、上期から業績回復見通しのはずです。)
2.下期の回復見通しは、世界景気の回復などほとんど根拠のない、願望に近いものである、
という事が言えます。富士通以外にも、円安メリットを受けるイメージの銘柄で、下期偏重の業績見通しを発表している銘柄が散見されます。株価が下落しても「押し目だ」と思って買ってはいけません。
製造業の株価は、業績(EPS)x バリュエーション(PER)という形で形成されています。業績はコンセンサス並みかそれ以下、バリュエーションは目いっぱい高まっている状態ですから、今回の決算発表を受けて製造業各社の株価は、明らかに上値が重くなるだろうと思われます。今回の業績発表で、業績はコンセンサス並みかそれ以下だが、黒字予想でPBRが1倍を大きく下回っている銘柄で、株価上昇したものが散見されます。JFE、イビデン、富士フィルムなどです。しかしこれは、PERで買える銘柄がもはやなくなり、業績不振などの「ワケ」があるからPBRが1倍割れだった銘柄を、ワケには目をつぶって「黒字なのにPBR1倍割れは安い」と無理やり理由をつけて買う、ということですから、末期症状の現れです。
一方で、金融や不動産などは、製造業銘柄とは違い、株価が業績xバリュエーションという形で形成されておらず、金融緩和や株高から来る恩恵を漠然と期待して株価形成されています。したがって「これまで日本で金融緩和の効果が出なかったのは、量が足りなかったからだ。量を劇的に増やす黒田緩和で金融緩和の効果が出るはずだ。」という期待感が支配的である間は、株価は堅調な状態が続くでしょう。日本株全体としては、5月調整、6月切り返し7月28日の参議院選挙直後まで戻り相場、と予想していますが、6月から7月の戻り相場をけん引するのは、金融や不動産など内需銘柄になると思います。その後、「やはり日本で金融緩和の効果がないのは量の問題ではなく、構造的な問題なのではないか」という懸念が織り込まれ始めるとき、金融や不動産などの内需銘柄の株価が明確に下落を始めるでしょう。その時期は、黒田緩和実行から半年経過する今年の中間決算発表時期(10月終わりから11月前半)ごろになると思われます。