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2013年5月28日のマーケット・コメント

いじめられっ子の逆襲を応援する気持ち?

 

日本株の急落を受けて、各所で株式市場関係者へのアンケートがされています。中でも日経ヴェリタスのアンケートがよくまとめられていました。ご覧になった方もいらっしゃると思います。アンケート内容で目を引いたのは、回答者35人全員が、今回の急落は「一時的なもの」であり「上昇相場の終わり」ではない、としたことです。つまり、期待する時期はわかりませんが、全員が5月23日の高値を更新する、と考えているということです。実際、私が話す機会のある市場関係者も、ほぼ全員が強気一辺倒ですから、アンケート結果は現状を反映した妥当なものなのでしょう。

 

急落により、日本株の今期予想PERは約18倍から約16倍に低下し、米国や主要欧州市場と同水準になったことは、前回のコメントでご紹介しました。したがって、現状水準よりもずっと高い5月23日の高値を更新するとすれば、EPS水準が切り上がるか、PER水準が切り上がるか、どちらかが起こる必要があります。(その両方でもいいですが。)

 

予想EPS水準が切り上がる可能性はあります。例えば、現在の今期会社予想業績の前提レートは、平均するとドル円が92.8円、ユーロ円が120.6円だそうです。会社発表の為替感応度を集計すると、対ドルで1円の円安で日本株全体の営業利益は約2200億円、対ユーロでは約800億円増加ですから、実際の為替レートが対ドルでも対ユーロでもそれぞれ10円円安になると、日経平均のEPSは1000円に迫る計算になります。

 

PER水準はどうでしょう。世界的な金融緩和の影響で、現在16倍の主要各国のPERが、全体として17倍とか18倍とかに切り上がる可能性はあります。ただ、日本のPER水準だけが切り上がる合理的な理由は見当たりません。最近、何人かの人から「年末の日経平均は20,000円だ。EPS1,000円でPER20倍だ。」という意見を聞きました。上述のようにEPS1,000円はあり得る話ですが、主要国のPERがすべて20倍に切り上がらない限り、日本だけが20倍になる、というのは合理的理由が見つかりません。「バブルが起こるから」と言われても、反論に困ってしまいます。

 

なぜ市場関係者のほぼ全員が、合理的理由もなく日本株に超強気なのか、を考えたところ、あることに気がつきました。「いじめられっ子の逆襲を応援する気持ち」が根底にあるのではないか、ということです。日本株は1990年代以降、小泉相場のときなど例外的な時期を除くと、世界の中で一貫してアンダーパフォーマーでした。日本人としては、日本がそんなに駄目な国になったとは思いたくない、という思いを根底に抱え、いじめられっ子を見る気分だったわけです。ところが、今回のアベノミクス相場で日本株は世界の中で突出したアウトパフォーマーになりました。いじめられっ子の逆襲です。日本人としては今まで溜まりに溜まった鬱憤を晴らす時です。形を変えた「愛国心」とも言えるでしょう。しかし市場は無情です。過度な期待、行き過ぎは、必ず修正されます。今回の急落で既にそれが起こりました。

 

日経平均14,000円水準は、主要各国とPER水準が同じになった水準ですから、予想EPSが切り下がるか、世界的にPERが切り下がるか、どちらかが起こらない限り、現状水準から日経平均が更に大幅に下落する理由は見当たりません。昨日のイブニング・セッションで日経平均先物は13,680円を付けました。これで当面の安値は付け、アベノミクス第3の矢である6月の成長戦略発表に向けて、徐々に戻っていくと予想します。戻りのめどは15,000円手前位のイメージです。成長戦略の内容が市場の期待以上であれば、15,500円位まで戻る可能性もあるでしょう。しかし、高値は抜きません。あくまでも「戻り」です。戻りが終わったかもしれない、と思った瞬間に買いポジションは躊躇なく解消すべきです。そして参議院選挙後は、日本株はカラ売りで儲けるものだ、とマインド・チェンジです。今秋から冬にかけて予想EPSは切り下がり、PERも切り下がっていく、と考えているからです。

 

誤解の無いように確認ですが、私は日本で生まれ育った、生粋の日本人です。愛国心も人一倍あります。だからこそ、今のように幻を追いかける幻想の日本復活ではなく、制度大改革を経て真の日本復活となる日が、1日でも早く来ることを望んでいるのです。