日本株が為替の安定化を先取り?
本日、ドル円の円安進行に比べて、日本株の上昇が目立ちます。先週、黒田会見によって引き起こされた、いわば人災による急激な円高進行とそれにより引きずり降ろされた日本株でした。円高が先で、それにより日本株が下落したわけですから、戻るときも円安が先で日本株が後から付いてくる、と想定していました。ところが本日、いまだドル円は94円台にもかかわらず、日本株が大きく上昇しています。
振り返れば、5月23日から日本株主導で調整が始まり、株安に引っ張られる形で円高進行となり、その調整は6月7日の米国雇用統計発表で終了していました。日本株の需給調整はそこで一巡していたはずでした。ところが先週の黒田会見ショックにより、為替が余計な円高進行したために、日本株は余計な下落を強いられた、と解釈できます。ドル円のこれ以上の円高進行がなさそうだ、ということで先に需給調整していた日本株が、ドル円の安定、そして円安方向への戻りを先取りして上昇してきた、ということでしょう。
ではなぜドル円のこれ以上の調整がなさそうだ、と日本株市場が織り込んできたのでしょうか。それは今日午前中のドル円の動きに理由があると思います。F/X口座で取引されている方ならご存知だと思いますが、追加証拠金が必要かどうかをF/X業者が判断する(値洗いする)際に使う為替レートは、NY引け後となる日本時間午前5時-6時です。ドル円は水曜日から96円を割れる動きとなりましたが、値洗いレートは木曜日朝は96円台、金曜日朝は95円台後半でした。95円前半以下なら追証になっていたが、NY引けに円安に戻ったおかげで、追証発生を免れた投資家が少なからず存在した、ということです。
ところが土曜日朝の値洗いレートは94円強でした。それまで追証発生を免れていた投資家のうち、ついに追証発生となった投資家が少なからず出たはずです。追証を入れる代わりにポジションを小さくすることで余力回復を図る投資家も多いため、東京時間が始まり午前中にドル売り圧力が高まります。実際に先週木曜日金曜日は、東京時間午前8時以降、急激に円高進行しました。今日もそのようなドル売り圧力を受けて、94円を割り込み93円台のどこまで行ってしまうのか、と身構えていた市場参加者は少なくなかったはずです。私自身もそうでした。
ところが今朝、値洗いレートよりもやや円安で始まり、じりじりと円安進行したことで、ドル円の需給調整も結果として一巡していたと日本株参加者が判断し、日本株の先行的な上昇につながった、と考えられます。
今週日本時間20日の早朝に発表されるFOMCと、それに対するNY市場の株と為替への反応を見るまでは油断はできないでしょう。それまではよほど突っ込む局面でもない限り、新規ポジションは取るべきではないでしょう。黒田会見ショックまでは、今回のFOMCでQE3の9月縮小、12月終了路線が一段と強く打ち出される、と考えていました。しかし、米国の出口戦略が世界的なリスクオフ反応を引き起こしていることを考えると、今回のFOMCではQE3縮小&終了路線をあえて抑えてきて、市場の収束を図ってくる可能性が高くなったように思います。そうすれば、リスクオフ姿勢の後退となり、米国株堅調、為替は円安方向へ戻り、となると思われます。黒田総裁とは違いFRBは上手に市場との対話を図ってくるのではないか、ということです。
FOMCが無事終了となれば、ドル円は96-98円、日経平均は13,000-13,500円での推移、7月11日に黒田総裁失態挽回でドル円100円、日経平均14,000円というイメージです。