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2013年6月20日のマーケット・コメント

FOMC無事終了、だが日本株もドル円もまだしばらく上値は重いか

 

日本時間の本日早朝にFOMC声明が発表されました。期待通り市場を収束に向かわせるような、絶妙のバランスの内容でした。さすがFRBです。今回、私の想定していなかった記述は

「現在の経済予測通りに行けば、失業率は2014年末には6.5%まで低下すると見られる」

と、出口の数値目標である失業率6.5%達成の時期予測を示したことでした。

「経済予測通りに行けば、QE3は年内に縮小をはじめ、2014年上期に更なる縮小を続けた後に2014年半ばに終了となる見込みである。」

「現時点でQE3が2014年半ば終了で決定したわけではなく、経済状況の変化次第で追加の支援策が実施される。」

「短期金利の引き上げはずっと先のことで、2015年以降になるだろう。」

この辺りは私の期待通りでした。

これで市場の混乱が続き、ドル円が93円台よりも下にもう一度突っ込む可能性はなくなりました。もともとドル円も日本株も6月7日の米国雇用統計発表で、需給調整は終わっていたはずでした。ところが6月11日の黒田会見で余計な混乱が続いたわけですが、今回のFOMCでこの「人災による混乱」が見事に収束される形になりました。ドル円の下値リスクは95円割れ、日経平均は12,500円台と見ていいと思います。

 

この発表を受けて、ドルは急伸しドル円は一時97円まで2円の円安ドル高進行となり、NYダウは200ドル超の下落となりました。NYダウは月曜日、火曜日にそれぞれ100ドル超の上昇でしたから、昨日の200ドル超の下落は想定の範囲内といえるでしょう。東京時間になり、日本株は昨日終値やCME先物引け値よりも下での推移、ドル円も96円台を円高方向にじりじり進行、となっています。

 

FOMCを無事通過し、これで世界的な市場混乱は収束に向かうと見ますが、まだしばらくは日本株、ドル円ともに上値は重い展開が続き、本格的な戻りは7月11日の日銀決定会合を待たなくてはならない可能性が高い、と思います。上値が重いと思われる理由ですが、まず日本株に関して言うと、需給整理がほぼ全く進んでいないことです。株価上昇時に尻上がりに積み上がった信用買い残が、株価が下落したにもかかわらずほとんど減っていません。上値のしこりは大きい、ということです。

 

ドル円については、輸出企業の為替ヘッジに伴うドル売りが、当面続く可能性が高いと思われるからです。多くの企業が今期の為替前提を、ドル円では95円にしています。業績見通し発表後、先週初めて95円を割り込みました。それまでは、実際のドル円レートが95円よりいくらくらい上になって、為替レートでの業績上ブレがどのくらいになるのか、とのんびり楽しみにしていた経営者も多かったでしょう。しかし異次元緩和にもかかわらず95円を割り込み、この先どうなるかわからないから、とりあえず為替エクスポージャーの一部をヘッジしておき下方修正要因になるのは避けよう、と考えだしている経営者は少なくないでしょう。実際に、最近数日間、ドル円の95円が妙に重い印象でした。

 

7月11日までまだ時間がありますから、それまでに日本株、ドル円ともに需給整理をこなし、7月11日に異次元緩和の本気度アピールとなって、どちらも上に抜け、日経平均14,000円、ドル円100円となるイメージです。黒田総裁がまたしてもコケる、ということはまずないでしょう。万が一そうなったら、また市場の大きな混乱が引き起こされてしまいます。

 

その後に予想される展開ですが、参議院選挙後の安倍首相の発言次第だと思います。ポジティブ・シナリオとしては、参議院選勝利で自民党主導で何でも決められるようになり、前回の成長戦略第3弾で全く盛り込まれなかった、既得権者に切り込むような政策を打ち出し、一部の外人投資家がそれを評価して日本株をニュートラルからオーバーウェイトに引き上げ、さらに2020年五輪開催地が東京に決まる、という展開です。そうなれば、日本株の戻り相場は9月半ば頃に15,000円に迫る水準に達するでしょう。逆にネガティブ・シナリオとしては、参議院選挙勝利後、安倍首相がこれまで後回しにされてきた感のある外交問題や軍事問題に注力するようになり、経済政策のことを聞かれても「経済のことは黒田総裁にお任せしています」となる展開です。その場合は、輸入物価上昇の弊害や下期業績への懸念が出てくる10月頃まで、12,500-14,000円程度でのボックス圏の動きが続き、その後下抜けとなるでしょう。

 

外人投資家が評価する成長戦略については、次の機会にご説明します。