中国のシャドーバンキング問題
先週に、中国で銀行間の貸し出しレート(インターバンク・レート)が一時13%以上に急騰したにもかかわらず、中国の中央銀行である中国人民銀行が全く資金を供給しなかったことで、シャドーバンキング潰しにいよいよ本気になったと捉えられました。それを受けて、今週中国株式は急落、日本株もその影響を受けました。その後、中国人民銀行はインターバンク・レートを適正水準に保つと発言し、中国市場は何とか落ち着きを取り戻しています。今後この問題が、中国以外の市場にネガティブな影響を与えるかどうか、考えてみたいと思います。
シャドーバンキングとは、信用リスクが低い、例えば国営系の企業が銀行から融資を受け、その資金を直接銀行から融資を受けることができない信用リスクの高い企業や、資金使途が投資など融資条件から外れている企業に、高金利で資金を貸し付けることです。不動産バブルの原因の一つであったり、不良債権が生じる原因の一つであったりするため、以前から問題が指摘されてきました。今回中国政府がそこに切り込もうとしている最大の理由は、行き過ぎた贈収賄の粛正だと思います。
広く認識されていることですが、中国は贈収賄天国です。公共事業で、大元は100の予算の工事が、様々な階層で抜かれて、工事業者に届くころには50に減っていた、などという話もよく聞きます。確認したわけではないですが、当たらずとも遠からず、というところでしょう。中国政府が最も恐れることは、貧困層が共産党1党独裁体制を倒すために立ち上がることです。経済が高成長の間は、貧富の差が広がったとしても、貧困層も仕事を得て収入を得る機会が多いですから、不満はたまりにくいです。しかし最近のように、大型公共投資で何とか支えてきた経済成長に明らかに陰りが出てきた状況においては、貧困層の不満は高まりやすい状況になっています。
そこで、贈収賄の温床となっているシャドーバンキングを潰し、粛清を図ることで貧困層の不満をガス抜きしようとしてきたと考えられます。粛清の結果、失脚する高級役人や倒産する企業も出てくるでしょう。しかしそれは政府にとってはむしろ望んでいることなのです。
市場への影響ですが、成長率減速の揚句に今回の斜度バンキング潰しですから、外人投資家資金は中国からの引き上げが続くでしょう。中国経済、中国株式にとって下押し要因です。しかし、海外市場への波及は基本的にはほとんどない、と思われます。中国売上比率の高い企業は、業績面である程度のネガティブな影響は受けるでしょう。しかし、あくまでもシャドーバンキング資金は、中国国内に留まっており、この問題が世界金融市場に影響を及ぼすことはないでしょう。ちょっと例えが悪いかもしれませんが、以前日本でサラ金潰しがありました。その結果、武富士は倒産しました。貸し倒れの被害にあった国内銀行はありましたが、海外金融市場に与えた影響などありませんでした。それと同様だと思います。中国株式急落で日本株式が連れ安する合理的な理由は無い、ということです。