米国企業業績とそれに対する株価の反応に注目
前回(10月9日付)のレポートでご説明したように、米国株は下抜けしてきました。米国株は誰もが、「バブルとまでは言えないが、もはや割安ではなく割高だ。」と考える中、今年に入ってずっと堅調な動きを続けてきましたが、エボラ熱感染拡大やIMFの景気見通し下方修正などのきっかけで、一気に投資家が逃げ始めている様相です。(調整の背景については10月2日付のレポートをご参照ください。)株価=EPS(業績)×PER(バリュエーション)の、まずは割高なPERの修正が起こっています。言いかえれば、景気先行きの不透明感が強まったことによる株式市場のリスク・プレミアムの上昇です。
今後はもう一つの株価決定要因であるEPS(業績)の動向と、それに対する株価の反応に注目です。米国では今週から7-9月期業績発表が本格化しています。実績及び今後の見通しについて、「迫力のある内容」なのか「予想通りだが迫力には欠ける内容」なのか「予想を下回る冴えない内容」なのか、またそれぞれに対する株価の反応はどうなのか、それ次第で「底打ち反転で戻りを試す」のか「しばらくもみ合った後に下抜けする」のか「下落が加速する」のかが占えます。
すでに業績発表をすませた銘柄を見ると、アルコアは7-9月期の実績は予想以上でしたが、おそらく今後の業績懸念から株価は下落。JPモルガンは7-9月期実績は法務費用が予想以上でしたがそれを除くと予想以上でしたが、株価は最初下落してほぼ変わらずまで戻す、という反応でした。とりあえず、市場の警戒心が強いことが伺えます。
欧州や新興各国の経済状況を考えると、迫力のある決算を出してくる銘柄は限られ、全体としては「実績には問題ないが先行きに懸念」か「実績にもすでに悪影響、先行きには強い懸念」のどちらかになる公算が高いと思います。日本の7-9月期業績発表は、10月最終週から本格化しますが、米国企業の業績発表を見て早めに織り込みが進む可能性があるため、株価のリバウンドを取りに行くのは米国企業業績をある程度見極めてからにすべきでしょう。ただ、リバウンドを取りに行くよりも、基本スタンスとしては「戻りは売り」とすべきだとは思いますが。
話は変わりますが、前回のレポートで日銀の追加緩和は10月31日、11月19日、12月19日のいずれか、とご説明しましたが、その後色々考え今では11月19日になる可能性が極めて高い、と考えています。まず、これまでの発言を聞く限り黒田総裁は明らかに消費増税賛成派です。であるならば日銀の追加緩和で消費増税決定を後押ししたい、と考えているはずです。安倍首相の決断は12月前半と言われていますので、12月19日の可能性が消えます。また黒田総裁は前回の会合で「展望レポートを見て、必要と判断されたら追加的措置を講ずる」としています。10月31日は「展望レポート発表」という、年2回の特別な会合であり、それと同時に追加緩和をすることは考えにくく、7-9月期業績発表の最中でもあります。11月19日ならば、展望レポートも業績発表も出そろい、大義名分を立てやすくなります。
追加緩和決定により、日経平均は短期間(数日-2週間程度)で500-1,000円の反発、その後再び下落トレンド入り、ドル円は110円を明確に突破する新たな円安ステージ入り、と予想します。ドル円は追加緩和までは106.50-108円のレンジでのもみ合いとなるでしょう。ちょうど以前101.50-103円でもみ合ったレンジが5円切り上がったイメージです。