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2014年10月30日のマーケット・コメント

10月FOMC-予想通りQE3終了

 

昨日FOMC声明が発表され、予想通りQE3 の終了が決定されました。また「相当の期間低金利政策を継続する」という文言は残され、これも予想通りとなりました。「相当の期間」がどれくらいなのかは、これまでと同様に今後の経済データによるとされました。今回の声明での変化は、労働市場およびインフレ見通しについて表現が上方修正されたことです。

 

これを受けて、ドル円は円安ドル高、米国株は若干の下落という反応になりました。ドル円は今月初めに高値をつけてから月半ばまでの調整局面で、相当短期筋のポジション整理が行われており、予想通りではありますがQE3終了決定を受けてあらためてドルロング(円ショート)ポジションを取る動きが広まったと考えられます。明日の日銀展望レポートで、景気見通しが下方修正されれば、日銀の追加緩和を織り込む動きが広まる可能性があるでしょう。

 

一方、米国株は、昨日はFOMC声明発表から取引時間が2時間しかなかったため、短期投資家のショートカバーで下落の後引けにかけて戻りましたが、時間がたつにつれて「株式市場の下支えとなってきた量的金融緩和(QE)はついに終わった」ということが、折に触れて株式削減を後押しすると思われます。企業業績がそれを打ち消すほどの迫力がなかった以上、米国株は再び下値模索の動きになる可能性が高いと思われます。

 

本日は円安、米国株若干下落を受けて、日本株は円安を優先評価して上昇しています。しかし今後は円安、米国株安を受けて、日本株は米国株安を優先評価して下落する可能性が高いと思われます。円安進行の恩恵はごく一部の企業に集中しているということにとどまらず、これまで発表された決算内容を見ると、円安進行は一部企業には業績押し上げ効果はありますが、通期上方修正を発表した川崎重工(7012)は円安効果を除くと実質下方修正、通期据え置きのホンダ(7267)は円安効果を除くと完全な下方修正です。川崎重工もホンダも円安進行メリットの大きい数少ない企業ですが、肝心の本業が冴えない状況になっています。

 

また、新興国景気減速の行方も見逃せません。昨日、ブラジル中央銀行は政策金利(短期金利)を11%から11.25%に引き上げました。ブルームバーグによると、このタイミングでの利上げは54人のエコノミストのうち、たった1人しか予想していなかったそうです。ルセフ大統領が再任され、インフレ制御への取り組みを市場にアピールする狙いがあったと思われますが、ブラジルは1-3月期、4-6月期とすでに2四半期連続で実質GDP成長率はマイナスです。そのような状況で利上げすれば、景気減速に拍車がかかることは明確です。中国の経済成長率も着実に鈍化してきています。欧州景気も回復の見通しが立っていません。日本も消費増税の影響が長期化しています。つまり、米国以外は世界的に景気減速なのです。

 

また、米国でQE3が終了し、次は(QE4ではなく)利上げという状況では、今年の1月後半から2月にかけて見られたような、新興国から米国への資金還流(リパトリエーション)が起こりやすい、ということです。それは新興国にとっては、株安通貨安債券安というトリプル安となり、景気減速を加速させます。

 

そのように想定される状況で、実は米国株が最も下落がマイルドになると思われます。通貨としてドルが一人勝ちの状況だということに加え、米国企業業績は世界景気感応度が最も低いのです。S&P500のうち、食品・薬品を除く製造業を中心に「世界景気敏感業種」のウェイトは約15%であるのに対し、TOPIXでは「世界景気敏感業種」は約47%です。企業業績全体として、世界景気後退の悪影響を日本は米国の3倍以上受ける、ということです。つまり、世界景気減速が理由で世界的に株下落という状況では、日本株は米国株の3倍下落してしかるべき、ということになります。

 

話が広がり過ぎましたが、目先の投資行動としては、ドル円は展望レポートを受けて110円を明確に抜くようであれば高値確認までドルロング継続、もし110円トライするも明確に抜けなければ、トレーディング(買い直す前提)でドルロング・ポジション縮小です。日本株はカラ売りエントリーで売り上がりです。今日戻り高値の可能性は高く、仮にそうではない(展望レポートを受けた円安進行に短期的に上に引っ張られた場合)にせよ最大限戻っても16,000円は超えないと思います。