日銀追加緩和決定
本日の日銀決定会合で、大方の予想に反してサプライズ的なタイミングで追加緩和が決められました。追加緩和の柱は「これまで年間60-70兆円としてきたマネタリーベース増加額を、来年からは年間80兆円に増額する」「ETF購入枠を、これまでの年間1兆円から3兆円に増額する」という2つです。追加緩和の発表を受けて、日本株、ドル円ともに暴力的な上昇となりました。
まず、追加緩和の効果を考えます。2013年4月にマネタリーベースを年間60-70兆円増加させることを目的に、日銀の大規模な国債買い入れが始まりました。本来、金融緩和は銀行融資の増加を経て景気浮揚効果に繋がることを狙って行われます。しかし、今の日本の状況下ではマネタリーベースの大幅増加は、ほぼ全く銀行融資の増加に繋がらず、その結果景気浮揚効果はほとんどないことがすでに明らかです。その効果は、「長期国債の買い支え」という1点のみに集約され、国債買い入れ額の増額により、国債市場はますます買い支えにより変動の小さい、参加しにくい市場になるでしょう。
もう一つのETF購入枠拡大ですが、以前からどんなに考えても「株式市場の買い支え」という以外の目的、あるいは狙っている効果がわかりません。しかしその買い方を見ると「買い支え」を目的に行っているのか首をひねりたくなります。購入枠が年間1兆円の今年は、1回あたり百数十億円のTOPIX連動ETFを購入してきました。これが3倍になるとすれば1回あたり400-500億円程度になるわけですが、2-3兆円という市場全体の売買代金を考えるとマーケット・インパクトは微々たるものであることに変わりはありません。
今後予想される展開は、ドル円と日本株で大きく違います。まずドル円ですが、29日にQE3終了を決め金融政策の方向性は引き締め方向であることを打ち出したFRBに対し、追加緩和を決定したことで日銀の金融政策の方向性は緩和拡大方向であることが明確になりました。一方はドル高、もう一方は円安の要因であり、中期円安ドル高トレンドは盤石なものになったと言えるでしょう。目先は当面の高値の模索です。今年の8月半ばから10月初めまでの状況の「始まり」の状態がまさに今であり、勝手に高値を決め付けて軽率にドルロングポジションを減らすべきではありません。むしろ、「買い増し目線」で臨むべきです。少しの押し目(逆張りでの買い増し)で買い増せればいいのですが、狙いすぎて全然買いませず、ということになりまねません。そこでお勧めなのが、大台替わり(順張りでの買い増し)で少し買う、押し目ではもっと買う、という戦略です。もし全く押し目で買えなかったとしても、大台替わりのたびに少しずつ買い増せます。
一方日本株は、上昇の持続力は極めて短いと思われます。円安進行や大規模金融緩和が、後半にわたっての企業業績押し上げ要因にはならない、ということはすでに判明しており、追加緩和を受けて中長期外人投資家が買い増しの動きを始めることは考えられません。いつもご説明しているように、「円安=株高」という過去の条件反射をいまだに引きずっている短期投資家が動いているにすぎず、彼らの動きが一巡すれば過剰反応した部分はすぐに剥落の方向に向かうでしょう。時間がたつにつれて、中長期投資家は「追加緩和、それを受けての円安進行まではわかるが、もはやそれが株高に繋がる論理は成立しない。むしろここは絶好の売り場なのではないか?」と考えてくる可能性も小さくありません。もし可能な方は、今日のイブニング・セッションでの先物のカラ売りをご検討ください。