ミョウジョウ・アセット・マネジメント株式会社の運営する会員制金融情報サイトです。

2014年11月19日のマーケット・コメント

安倍首相会見-はたして選挙結果は思惑通りとなるか?

 

昨日、安倍首相が会見を行い、予想通り2015年10月から予定されていた消費増税は2017年4月からに先送り、21日に衆議院を解散してその是非を国民に信を問うことを表明しました。また消費増税に関して、これまで「景気動向を見ながら最終判断する」とされていた景気判断条項を撤廃し、状況いかんを問わず2017年4月から消費税率を10%にすることも明らかにされました。日本が財政再建化を放棄した、と海外から見られないためという背景は理解できますが、多くの国民にとっては「どんなに不景気でも増税」と捉えられる恐れもあります。

 

消費増税先送りに関して、国会で決議するのではなく、なぜ衆議院を解散して選挙を行うかに関しては、「税に関する約束を変えるときには、当然選挙でその是非を国民に問うべきだ。前回の選挙で民主党が大敗したのは、2009年の選挙の時に約束していなかった消費増税を、選挙せずに決めたからだ。」と説明しました。しかし、増税するなら国民の信を問う必要はあるでしょうが、すでに決まっていた増税を先送りすることの是非を、なぜ選挙で国民に問う必要があるのか、説得力はありません。やはり目的は、多少議席を減らすことになるとしても「1.衆議院議員の任期を4年に戻す」「2.不祥事による2閣僚辞任をリセットする」「3.消費増税先送りが将来不都合を起こしても、国民の信を得たことだとし、決断の責任から免れる」「4.集団的自衛権も公約に混ぜ込むことで、その点も国民の信を得たとして国会運営で優位に立つ」ということなのでしょう。(個人的には、安倍首相にとって一番重要なのは、おそらく米国との密約であり安倍首相個人としても思い入れの強い4.ではないかと感じています。)

 

アベノミクスによる株高で証券業界は大幅な恩恵を受けており、証券業界の人間のほとんどは自民党に投票するでしょう。しかし株高を除くと、アベノミクスは何の成果も上げていません。一般庶民にとって、株高からの恩恵は無く、むしろ円安進行による様々なものの値上がりを中心に、アベノミクスからはデメリットばかりがもたらされた、と感じている人は相当数いると思われます。2四半期連続のGDPマイナス成長はその象徴でしょう。前回の選挙で自民党に投票していても「アベノミクスはもうやめてくれ」と、今回の選挙では自民党以外の党に投票する人は少なくないでしょう。その程度次第では、自民党が予想以上に議席を失う可能性があります。

 

日本の証券業界では、消費増税先送りで景気腰折れ懸念後退、選挙で勝てば成長戦略が大きく前進する期待、以上により株高要因とはやし立てるでしょう。しかし、自民党の議席動向いかんで、市場は荒れるかもしれません。

 

現在の日本株は、いまだ先物・オプション業者の空中戦が繰り広げられています。日中のボラティリティの高さが、それを物語っています。7-9月期業績を織り込んだ水準が15,000円台後半、追加緩和を受けてそれが17,000円台半ばに上昇しましたが、バリュエーションから見ると今期予想PER15.5倍がPER17倍になったということです。米国と同水準であり、もはやどこから見ても「日本株は割安」とは言えません。追加緩和でPER水準が切り上がるべき、という合理的な説明はなにもなく、やはり空中戦としか言えません。空中戦(マネーゲーム相場)は値動きが荒く、上にも下にも短期的に値幅が出やすいものの、その持続期間は短いという特徴があります。基本スタンスは売り(カラ売り)で間違いないですが、短期的に意外高したとしても飛ばされないよう、ポジションには余裕を持ち、明確に終わった時に売り乗せることをお勧めします。

 

昨日あたりから、先物・オプション業者の空中戦に加え、個人投資家の投機資金が特定の銘柄を集中物色する動きが見られます。ここに参戦することは決してお勧めできません。ひとたび参戦して最初うまくいったりしたら、勝ち逃げすることができなくなり、大けがに繋がる可能性が極めて高いと思うからです。