FOMC議事録発表を受けた市場反応-日本株とドル円の見通し
昨日、米国でQE3終了を決めた10月29日FOMCの議事録が発表されました。「インフレ警戒感が弱まるリスクに注意しなければならない」「利上げの時期はあくまでも今後の経済データ次第と強調すべき」という内容で、FRBは早期利上げの可能性を否定していないことがあらためて確認されました。発表を受けて、米国株はほぼ無反応、ドル円は円安ドル高進行となりました。
NY市場で昨日比で大きく円安ドル高進行となり、東京市場でもその流れを受け継いでいるにもかかわらず、日本株は昨日比ほぼ変わらずの動きとなっています。これまでご説明してきたように、企業業績やバリュエーションの観点からは、現状の日本株は説明がつかない水準です。しかしいまだに中長期投資家が現物株を売り始めた兆候は見られませんので、今日の動きは先物・オプション業者が買いで仕掛けることに限界を感じ始めてきたことが背景ではないかと推察されます。
11月6日のコメントでご説明したように、これまでドル円はおおむね切りの良い5円幅でレンジを切り上げてきました。現在のドル円の動きは移動平均線からのかい離率などを考えるとスピード違反に思えますが、以下のように解釈するとわかりやすいと思います。まず、日銀の追加緩和という材料で当面の上限が110円から115円に5円幅で切り上がりました。しかしもみ合うまもなく、消費増税先送りという新たな材料が出てきて、当面の上限が115円から120円に切り上がったわけです。2つの材料の間にそれなりの間隔があり、その間もみ合っていたとすればスピード違反の感覚は無かったはずですが、今月は相場を大きく動かす(5円幅でレンジを変えるほど強い)円安材料が立て続けに出てきたため、チャートから見れば過熱に見える現状が作り出された、ということです。
本日もドル円は新値更新の動きとなっており、「今だ当面の高値は確認されず」です。120円になるのではないかと思いますが、決して決め付けてはいけません。これも11月6日のコメントでご説明した通り、同一水準で2回跳ね返されて初めて当面の高値が確認できるのです。それまでは、たとえ短期トレーディングでもドル・ロングポジションを減らすべきではなく、むしろ10月31日のコメントでご説明したように、1円刻みで大台が変わるごとに少しずつ買い増していき、押し目があったら多く買い増す、という行動を取ることをお勧めします。
派手な空中戦の結果ではありますが、事実として今月は円安株高となりました。いまだに円安は株高要因だという意見も多いため、円安進行が続いているうちは日本株は大きくは下がらないでしょう。(いまだに円安株高を主張する人に、ぜひそのロジックを語ってもらいたいところではありますが。)しかし、いずれ円安進行が一服し、日本株が大きく下落する局面が訪れ、その初動ではドル円も円高方向に引っ張られるでしょう。そこはドル円の絶好の買い場です。その後、時間の問題で日本株が下落継続となっても、円高進行は止まりドル円は円安ドル高方向に反転すると思われるからです。
日本株に関しては、昨日コメントを書いた時点では、円安進行を受けて派手な買い仕掛けが入り短期的に意外高するかもしれないので、5割の力でカラ売りと考えていましたが、昨日(軽く円安株安でした)と本日午前10時30分まで(大幅円安株横ばい)の動きを見て、しばらくもみ合うことを覚悟で7-8割の力でカラ売りでいいのはないか、と考えがやや変わりつつあります。引けまで見て、円安の流れが崩れない中で株が軟調に推移し続ければ、その考えの変更が確定します。FOMC議事録で早期利上げが否定されなかったことで、米国株の大幅上昇は考えにくく、円安進行が日本株の買い仕掛けに繋がらなくなったとすれば、現状水準から日本株が上昇する要因は何もないからです。