ドル円は短期需給調整終了か-徐々にドル円と日本株は独自の動きへ
前回のコメントを書いてたった2日しかたっていませんが、市場はその間に大きく動いています。中国が「低格付け資産を今後担保として扱わない」という方針を示したことで、中国株が昨日急落したことや、ギリシャ大統領選挙を巡る不透明感などから、株式市場は世界的に不安定な動きとなっています。欧州株は全般的に大幅安となり、米国株も一時大幅安でしたが、引けにかけて戻る動きとなりました。日本株は今(13時)のところ大幅安となっています。
一方、ドル円は昨日のNY市場で、株安を受けて一気に118円割れまで調整し、その後急速に戻しています。日本市場でも、日本株の大幅下落に引きずられて円高方向に動いているものの、118円どころか119円も割り込んでいません。昨日のドル円の動きは、10月16日と同様の動き、すなわち短期投資家の需給調整が一気に行われた、と考えられます。新たな悪材料が出て株式が更に大幅下落、とならない限り、昨日の117.94円で当面の安値を付けたと見ていいでしょう。
日銀の追加緩和を受けて突如復活した「円安株高」の相関でしたが、今後は日本株とドル円はそれぞれ独自の動きへ移行していくと思います。「相関」という言葉の意味を考えると、そもそも「相関の復活」ではなかった、とも見られます。「AとBとの相関」とは「AだからB」という関係であり、以前は「円安だから株高」でしたから「相関」していたわけです。しかし何度もご説明してきたように、「円安だから業績向上、だから株高」という業績という架け橋が実は大して機能しないことが明らかになり、今年春頃から円安株高の相関はなくなっていきました。追加緩和を受けた円安株高の動きを、「円安だから株高」ではなく、「追加緩和で通貨供給量が増えるから円安、追加緩和で国内景気向上が期待できるから株高」と、共通の材料でドル円と日本株がそれぞれ独自の動きを取り、結果として円安株高になった、と考えれば「相関の復活」ではないのです。
屁理屈みたいな話はここまでにします。今後は、株は企業業績見通しやバリュエーションに沿って動いていき、ドル円は日米の金融政策の方向性の違いや予想される米国利上げの時期などに沿って動いていく、すなわちそれぞれが別々の材料で独自に動いていくことになるでしょう。
今後の流れは、高バリュエーションの修正や業績懸念の高まりから、日本株は下落基調に転換、日米の金融政策に変更なくドル円は円安進行継続、となると思います。現象としては「円安株安」ですが、まだ「円安だから株安」という逆相関が生まれるということではありません。あくまでも「無相関」の中で、それぞれが別々の材料で独自に動いた結果が、たまたま「円安株安」だったということにすぎません。「円安だから株安」は、外人投資家が円という通貨に対する不信感から、円資産全体を売却する動きになった時に生まれます。ドル円でいうと150円を超える円安進行の頃からのイメージです。結局また屁理屈に戻っているじゃないか、と怒らないでください。