日本国債格下げ-それでも債券安は起こらず、しわ寄せは円安進行に
昨日、大手格付け会社ムーディーズが日本国債の格付けを、これまでのAa3(S&PのAA-に相当)からA1(S&PのA+に相当)に引き下げることを発表しました。消費増税先送りを受けて、日本はこれまで以上に財政再建化が困難になる、という理由によるもので、至極当然の指摘でしょう。日経新聞の2面に記事がありますが、日本国債の格付けは米国やドイツ、英国などの先進国には遠く及ばないばかりでなく、韓国や中国よりも低い格付けとなりました。日本人としてはピンと来ないかもしれませんが、海外からは日本の財政状態に相当な懸念を持たれている、ということを改めて認識すべきでしょう。
一般的には格下げは債券価格の下落に繋がります。しかしながら、格下げが日本国債の価格下落に繋がるとは思えません。理由は単純明快です。1.日銀が大量に買い支えており、格下げでもその姿勢は変化ないから、2.外国人投資家は国債をほとんど保有しておらず、格下げを受けて日本国債を売却する投資家は存在しないから、の2点です。
では、日本国債の格下げは市場に何の影響を及ぼさない、という事なのでしょうか。いえ、そのしわ寄せは通貨下落、すなわち更なる円安進行という形で現れます。海外投資家は持っていない日本国債は売れませんが、為替市場で円を売ることはいくらでも出来ます。日本国債格下げが、中長期的な円安ドル高トレンドの新たなあと押しとして加わったということです。
短期的には、ドル円は一旦調整を入れる可能性が高いと思います。2回119円近辺で跳ね返され、119円近辺が当面の高値になる可能性が高く、またシカゴ筋ポジションを見ると円ショートポジションが4週連続で増加し、110円で跳ね返された10月初め頃のポジションに迫る水準となっているからです。しかし、ここで一旦ドルロング・ポジションを減らす、というよりは、高値は買い上がらないまでも押し目では確実に買い増しを行う、とすべきでしょう。値幅での調整は小幅にとどまり日柄調整で終わる、という動きになる可能性も低くないからです。
日本株市場は、依然として先物・オプション業者の空中戦と、超短期個人投資家のマネーゲームに支配されています。もはや業績とバリュエーションでは説明のつかない水準であり、いずれあるべき水準に下落すると思われるものの、当初イメージしていたよりも長続きしているのも事実です。選挙の時期と重なる12月12日のメジャーSQが転機になる可能性が高いと思いますが、それまでに意外高する可能性も否定できないため、全力でカラ売りするのは実際に転機を確認してからでも遅くないでしょう。
ご存じだと思いますが、私は2年ほど前に「円安恐慌」という本を著作しました。円安進行がいずれ株安に繋がり、最終的には債券安に繋がる、という内容だったわけですが、当時イメージしていた時間軸と現在イメージしている時間軸は、やや異なっています。「円安進行はすでに明らかに起こっており、早晩、株安が始まるものの、債券安はなかなか起こらない。債券安が起こった時には、一気に大規模な構造改革に向かわざるを得なくなる。」というのが現在のイメージです。したがって、債券安にベットするポジションを取るのは時間効率の観点から得策ではなく、もっぱら円安、そして株安にベットして収益を狙うべきでしょう。