「都合のいい解釈」の米国市場に違和感
昨日米国株式市場は続伸し、NYダウは直近の安値を付けた12月16日以降、5日連続上昇となり、最高値を更新しました。12月に入り、前回高値を付けた12月5日以降、7営業日かけて下落した約1,000ドルを5営業日ですべて取り戻したことになります。これまでも何度か1,000ドル規模の調整があり、その後値を戻す、という展開がありましたが、今回は下げも上げも(特に上げが)これまでで最も短期間で行われています。
これを「米国株は強い」と単純に見る向きが多いようですが、私には「危うい状態」に見えます。米国株が本当に強い時には、現物株主導でボラティリティが高まらない形で、ゆっくり、でも着実に上昇します。最近の状況はこれとかけ離れているのです。また、日本のメジャーSQに当たるクアドリプル・ウィッチングの12月19日以外は、これだけ上下の値幅が出た割には、現物株の売買代金は盛り上がりを見せていません。
また急激な戻りの手掛かりとなった材料も、不可解です。下げの原因は、原油とルーブルの急落でした。これは明解です。しかしその後の戻りは、もっぱら「FOMCで利上げを急がないとの姿勢が強調され、株式市場に買い安心感を与えたから」とされています。しかし、全く同じFOMC声明を受けて、為替市場では「来年6月頃には利上げがありそう」としてドル高の反応となっています。昨日の7-9月GDPの上方修正に対する反応も同様です。株式市場では「米国経済は思った以上に強い」と株高反応し、為替市場では「やはり早期利上げの可能性が高い」とドル高反応しました。
本来、利上げは為替市場にはドル高材料でありますが、株式市場にはネガティブな材料のはずです。それを考えると、最近の米国株市場は理屈で整合性の取れない、いいとこ取り、あるいは都合のよい解釈に基づくものだと言えます。日本株市場で追加緩和以降、理屈で整合性の取れないデリバティブ業者主導の空中戦が展開されているのと同様に、最近の米国株市場でも同様の様相を呈してきている可能性が高いと言えます。短期的には意外な値幅が出る可能性はあるが、その持続力は短い、という点では共通でしょう。日米同時の空中戦終了に向けて警戒が必要でしょう。
ドル円は120円を明確に超えてきましたが、日本市場では日本株が堅調な中むしろ円高方向に押し戻されており、125円に向けてレンジを切り上げる初動には思えません。元のレンジ(116-120円)に戻る可能性と、120円でしばらく底値固めしてから125円に向かう可能性の両睨みで、しばらく様子見で臨むしかないでしょう。株の空中戦が終わる初動では、円高ドル安に引っ張られるでしょうから、それがいつ、ドル円がどの水準で起こるかが重要でしょう。