スイスフランと円にはもはや何の共通点もない-ドル円は絶好の買い場
昨日、スイスがこれまで対ユーロで設定していた1ユーロ=1.2スイスフランの上限を撤廃するとの発表がありました。スイスは2011年9月以降、スイスフランの対ユーロでの過度な上昇を抑えるために上限を設定し、上限を超えたら無制限に為替介入することで上限以下に戻す、という政策を続けてきました。それが撤廃されたのです。それは対ユーロでのスイスフラン高という、いわばフローのリスクよりも、ユーロをこれ以上買い続けることによって生じるストック(バランスシート)のリスクを優先させるに至った、ということです。1週間後の1月22日にはECBの追加緩和策発表が予定されており、それによるユーロ下落を見越してのこの時期での決断だという面もあるでしょう。
為替市場では、当然にスイスフランは大暴騰しましたが、なぜかそれに吊られて円も上昇しました。日本国債がまだ健全な国内消化だった時代(日銀の異次元緩和開始以前)には、スイスフランと並んで安全通貨、避難通貨とされたのが円だった、ということの余韻なのでしょうが、今となっては円がスイスフランに連れ高する理由は全くありません。財政収支はスイスは黒字、日本は大幅な赤字。貿易収支はスイスは黒字でかつ黒字拡大基調、日本は赤字でかつ赤字拡大基調。経常収支はスイスは対GDP比約13%という巨額黒字、日本は2014年に赤字転落寸前です。スイスは安全通貨とみなされるだけの強い理由が存在しますが、日本にはもはや何も見当たらないことがわかります。さらに言うと、日本はもはや国の財政赤字を中央銀行が穴埋めする、国家財政ファイナンス政策を大規模に展開中の国です。そのような国の通貨に対する信認が続く理由は到底ありません。
昨日のコメントでドル円底打ち宣言をした直後に、スイスの政策転換があり、本日東京時間で一時115円台と昨日NY時間につけた安値を更新しましたが、ここからの円高傾向の持続期間は極めて短いと思われ、116円台のドル円は絶好の買い場との見方を再度強調します。