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2015年1月21日のマーケット・コメント

日銀決定会合を受けて

 

やはり、本日の日銀決定会合の内容は、事実上「無風」でした。市場では、昨日の過度な期待感による円安株高が剥落し円高株安、という反応になっています。しかし、今回注目すべきは2015年度のインフレ見通しが、原油の急落などを受けて1.7%から1.0%へ下方修正されたことです。これは当然、インフレ目標値である2%の達成時期を遅らせることになり、日銀としてはいずれインフレ押し上げ方向のテコ入れをしなければならなくなるでしょう。インフレ押し上げを図るためには円安を一層進行させる以外に手段はありませんので、再度の追加緩和を行うことにより、一層の円安進行を図る、ということになります。

 

中央銀行として一番良くないのは短期間で政策を変更することなのですが、原油価格暴落という明らかな想定外の外部環境変化があり、公式に2015年度のインフレ見通しを大幅下方修正してきた以上、前回の政策変更(10月31日の追加緩和)から、少なくとも1年程度は経過観察するとは限らなくなりました。早ければ4-6月(決定会合発表の日程は4月8日、4月30日、5月22日、6月19日)にも再度の追加緩和を決定する可能性が出てきたと言えます。

 

1-3月の間に原油価格が底打ち反転する(=生産者の中から強制的退場者が多数出て、強制的な供給減少が行われる。詳しくは2015年1月9日付コメントを参照)とは思えないため、再度の追加緩和決定の時期は遅めよりは早め、つまり6月や5月ではなく4月8日の可能性の方が高いと感じます。

 

時期がいつかという問題はあっても、いずれにせよインフレ押し上げのために円安進行を加速させてくることは確実ですから、これでますます円安ドル高進行のトレンドは堅固なものになった、と言えるでしょう。

 

目先の注目は、明日のECB会合でどのような追加緩和が打ち出されるか、です。コンセンサスでは「買い入れ対象に国債も含め、規模は5000億ユーロ(約70兆円)」とされています。しかし5000億ユーロの債権買い取りという規模を、はたしてドイツが容認するのか疑問です。ドイツは第1次大戦での莫大な補償費を抱え、中央銀行が国債を引き受けるという国家財政ファイナンスを行い、ハイパーインフレとなり国民の不満が高まりナチス党が台頭し第2次大戦に突入、という経緯をいわばトラウマとして持っています。そのドイツが5000億ユーロという規模の国債中心の債券買い入れを容認するとは思えません。ドイツは「大規模量的緩和=麻薬」「歳出削減による財政均衡=苦いけど良薬」とわかっていたからこそ、シュレーダー改革から始まる歳出削減で財政均衡を果たしたのです。

 

また、1月25日にギリシャ選挙が控えており、その結果次第でギリシャがユーロ離脱を打ち出す可能性がある以上、明日の段階で具体的手法(買い入れ対象と規模)まで踏み込むことができるのかも疑問です。

 

結論としては、明日のECB会合では「次回の会合で量的緩和の具体策を発表する」ということの発表にとどまる可能性が高く、その場合市場は混乱するでしょう。もしユーロが買い戻される(=ドルが対ユーロで売られる)ことに伴い円高ドル安になれば、そこは円ベースの投資家にとってはドルの絶好の買い場です。