10月FOMC終了-FRB、日銀の行動条件
昨日のFOMCでFRBは、9月17日に続き利上げを見送りました。しかし声明文では「米国経済はなお緩やかなペースで拡大している」とし、「経済状況の現状と予測を精査し、次回12月16日の会合で利上げを検討する」と、年内利上げの可能性を残しました。また、9月の声明にあった「最近の世界的な経済・金融情勢は経済活動を抑制する可能性がある」という文言は今回は削除されました。10月に入り、世界的に株式市場は大幅に反発している状況を踏まえれば当然でしょう。つまり利上げの条件は、「今後発表される米国経済統計が良好であること」および「世界的に市場混乱がないこと」だといえます。
一方、日銀は10月30日の決定会合での再追加緩和を見送るでしょう。同時に発表される「経済・物価情勢の展望レポート」では、インフレ見通しが下方修正されると思われます。インフレ2%達成を目標に掲げ、かつ見通しが変わったら躊躇なく追加措置を行う、という方針を維持してきた日銀にとって、「インフレ見通し下方修正」は再追加緩和の条件であるはずです。にもかかわらず今回見送ると思われる最大の理由は、「株価が戻り基調にあること」です。日銀にとって再追加緩和は、事実上「撃てる最後の弾」であり、円高株安が大きく進行し「ここでやらねばいつやるのか」という状況下でなければ撃ちたくない、ということだと思います。日本市場だけが大きく動くとは思えないので、つまり「インフレ見通し下方修正」に加わる、再追加緩和のもうひとつの条件は「世界的な市場混乱」だといえるでしょう。
以上のことから、年内の展開として2つのシナリオが導けます。ひとつは、株式市場の戻り基調が早晩終わり、将来の業績懸念などから再び世界的な市場混乱が起こるというシナリオです。その場合、FRBは12月16日に利上げできないことになりますが、日銀は年内(11月19日か12月18日)にも再追加緩和に踏み切るでしょう。しかしそれが、これまで同様、実体経済に好影響を及ぼすとは思われず、市場の好反応は限定的なものにとどまる可能性が高いでしょう。日経平均が1-2週間で1,000円程度上昇する、位のイメージです。このシナリオをメイン・シナリオと考えています。この場合でもFRBは利上げ意欲を表明し続けると思われます。つまり、「今回は利上げを見送るが、条件が整ったら利上げを行う」といい続けるということであり、世界情勢が相当程度悪化しない限り「当面利上げは行わない」とは言わないでしょう。市場が「利上げの可能性が無くなった」と織り込んで、過剰流動性相場が復活することは無い、ということです。
もうひとつは、その可能性は低いと思うものの、このまま株式市場の戻り基調が続き、米国経済統計も順調に推移し、日銀は再追加緩和を見送り続け、FRBが12月16日のFOMCで利上げを決める、というシナリオです。米国の利上げは、米国以外の各国から米国への資金回帰につながります。それは新興国資産(通貨、株式、債券)および資源価格の下落圧力となり、年末から年明けに世界的な市場混乱に発展する可能性が高いでしょう。
時期の問題はあっても、いずれにせよ、世界的な市場混乱は避けられそうに無い、ということになります。日本、欧州、中国などで金融緩和の効果が出ない原因は、資金需要が乏しいことであり、その根本的原因は実体経済での需給バランス悪化です。資源価格の大幅下落がそれを如実に表しています。これまで景気サイクルのボトム圏でさまざまな形で起こってきた「痛みの伴う需給調整(望まざる供給の減少)」が、今回も避けられそうにないということです。