FOMC議事録&株式市場の2007年との相似性
昨日、利上げ見送りを決めた9月17日FOMCの議事録が発表されました。議事録では「前回(7月29日)の会合以降にみられた経済動向によって、委員会の景気見通しが大幅に変更されることはなかった、との見解で一致した。」とされ、依然として年内利上げ開始に前向きな姿勢を示しました。ただ一方で、「委員会は景気見通しが悪化していないことを裏付ける追加情報を待つのが賢明である、と判断した。」とされました。また「会合参加者は最近の世界動向がインフレに短期的な下押し圧力になる可能性を予想した。」「中国とその他の新興国の景気悪化が、米国の純輸出を圧迫する可能性が高い。」「一段のドル高は米国のインフレを押し下げる可能性がある。」などとされ、利上げ決定には米国経済好調を示すさらにいくつかの経済指標と、海外(米国以外)情勢の落ち着きが必要だ、という見解を示しました。
利上げ決定に「海外(米国以外)情勢の落ち着き」を条件に加えてしまったことは、後に禍根を残すことになりそうだ、ということは、すでに9月18日付のコメントでご説明した通りです。また「海外(米国以外)情勢」が、各国の株式市場や為替市場の動向を指すのか、各国の経済動向を指すのかも判然としません。FRBの方針は、市場にますます伝わらなくなり、FRB動向の予想コンセンサス形成(何を織り込んでいくべきか)からは一段と離れた印象です。
議事録発表を受けて、為替市場ではほぼスル-でしたが、米国株は上昇の反応となりました。これは、利上げの有無や時期を織り込んだ反応ではなく、株式市場と商品市場で今月ずっと続いているショートカバー主導の上昇でしょう。新規買いではなく、ショートカバーの買い戻し主導の上昇は、短期投資家によるものであるため(中長期投資家はカラ売りはしない)、値幅は大きく出るが持続期間は短い、という特徴があります。
ちょうど良いサンプルがあります。以前から何度か2015年の相場と2007年の相場との相似性をご説明してきました。(添付のファイルをご参照ください。)2007年の展開を振り返ると、8月に突然の急落、9月後半まで安値圏で乱高下、9月後半から10月半ばまで上昇し10月11日(木)に戻り高値を形成、その後再び下落基調となり、11月には安値更新、でした。この動きの背景を考えると、「8月は短期投資家が急落の先鞭をつけ、8月から9月は中長期投資家の売りと短期投資家のカラ売りで下落、第1陣の中長期投資家の売りが止まり、短期投資家のショートカバー主導で上昇、米国企業業績発表で業績懸念が深まり、第2陣の中長期投資家の売りが始まる。」ということになるでしょう。
今年もここまで同様の展開となっています。10月の株価上昇は明らかにショートカバー主導です。個別銘柄の動きを見ても、強烈なリターン・リバーサルです。つまり、業績懸念などからカラ売りが多く入って株価が大きく下落した銘柄ほど、大きく株価が戻っています。今年も来週から米国企業業績発表が始まり、業績懸念が顕在化し始めます。世界的な「ショートカバー相場」は、そろそろ終わり、第2陣の中長期投資家の売りが始まる、と予想されます。