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2015年11月18日のマーケット・コメント

明日の決定会合で再追加緩和見送りを予想する3つの理由

 

明日11月19日に日銀決定会合があります。これまで「日銀にとって再追加緩和は事実上最後の弾であり、相当な株安の状況でない限り、その弾を撃つことはない」とご説明してきました。その考えに変化はなく、日経平均が20,000円に迫ろうかという状況では、再追加緩和は間違いなく見送られると予想されますが、今回はその点に関して詳しくご説明します。

 

1.国債買い入れはすでに相当に大規模で、できることなら更なる拡大は避けたい

日銀は現在、年間80兆円増加のペースで国債の買い入れを行っています。年間の国債発行額の純増分の約2倍の規模であり、そう発行国債残高に対する日銀の保有比率はすでに30%を超えています。その規模と将来のリスクに見合うだけの、景気浮揚効果は現れていないことは日銀も認識しているはずで、更なる規模の拡大はできる限り避けたいと考えているはずです。かといって、規模を縮小するという選択肢はありません。国債価格の大幅下落、すなわち長期金利の大幅上昇につながってしますからです。

 

2.日本の政権に対する配慮

安部政権が当初期待していた、円安誘導によりもたらされる連鎖は、「円安進行」→「輸出競争力向上の結果、各企業が輸出を増加させるために国内生産能力増加を画策」→「各企業が国内で設備投資を活発化」→「国内景気浮揚効果」だったはずです。しかし11月16日に発表された7-9月期GDPでも見られるように、国内設備投資はまったく活発化していません。安部政権にとってこれ以上の円安誘導は、その負の面をめぐる批判につながります。

すでに過度な円安進行の弊害が政府内で問題になっています。弊害の代表ともいえる食料品など生活必需品の値上がりを受けて、2017年4月の消費増税の際の軽減税率をめぐって、政府内ではまさに議論が活発化しています。そんな中、円安進行を加速させる再追加緩和を日銀が実施してくるとは思えません。

安部政権にとって株高維持は重要です。もし安部政権唯一の成果とも言っていい株高が失われていく、すなわち株価が相当程度下落したら、過度な円安進行をめぐる批判よりも株高維持のための円安進行を優先せざるを得ないでしょう。その意味でも、再追加緩和決定にとって株価水準が重要なのです。

 

3.米国FRBに対する配慮

前回のコメントでもご説明したように、米国FRBは12月16日の利上げ決定に向かって、着々と地ならしをしています。米国では過度なドル高進行の弊害が議論されている中、あえてFRBはドル高進行につながる利上げを行おうとしているのです。FRBの利上げに対する執念は、やはり是が非でも利下げの余地を作りQE4を避けたい、ということの現れでしょう。

そのような状況で、もし日銀が円安ドル高進行につながる再追加緩和などしたら、FRBは利上げをしにくくなってしまいます。FRBにケンカを売るようなことをする動機は日銀にあるはずもないでしょう。なお、年内最後の決定会合は12月18日と、次回FOMCのわずか2日後であることを考えれば、予定通りに12月16日に利上げ決定となった場合、日銀がその直後に再追加緩和をするとは考えられないため、年内に再追加緩和はないということになるでしょう。

 

本日の日本株は、米国株横ばい、中国株小幅下落、ドル円横ばいという外部環境の中、日経平均は戻り高値を更新する動きになっています。7-9月期GDPが予想以上に弱く、4-6月期に続いて2四半期連続GDPマイナス成長、すなわち言葉の定義で言うところの「リセッション」になったことを受けて、明日の再追加緩和期待が背景にあると思われます。明日の再追加緩和見送りを受けて、反動安が想定されます。その際、ドル円もそれなりに円高ドル安に引っ張られることになるでしょうが、そこはドルの買い場でしょう。