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2015年11月4日のマーケット・コメント

株式市場の2007年との相似点-米国株編

 

米国株の上昇基調が止まりません。8月24日に安値をつけ、9月29日に2番底をつけてから、10月2日の弱い雇用統計発表を受け一時急落も切り返して大幅上昇となった後、大きな押し目なく上昇基調が継続し、急落直前の水準を回復、さらに高値更新も視野に入る水準まで回復しています。これまで何度か、今年の株式市場動向と2007年の株式市場動向が大変似ている、ということをご説明してきましたが、現在に至る米国株動向も、実は2007年当時と非常に似ています。

 

2007年には、7月から8月にかけて急落があり(NYダウは直近高値から約11%下落)、8月16日に安値をつけてから戻り基調が続き、10月1日には最高値を更新、10月11日にピークアウトしてから11月26日安値まで再び下落基調(NYダウは直近高値から約10%下落)となりました。つまり、2007年には、7,8月の急落後、高値更新まで戻ったのです。

 

今年も米国株は、急落直前との比較でも、最高値からの比較でも、世界株式市場の中で株価の戻りは突出しています。この要因は「米国株式市場を構成する企業業績の構造」だと思われます。S&P500の業種構成を見ると、いわゆる世界景気敏感業種のウェイトは全体のわずか15%にとどまっています。残りの85%は、ディフェンシブ業種と広義のサービス業ということになります。TOPIXで同じことをすると、全体の約50%が世界景気敏感業種です。すなわち、米国企業業績全体として、世界景気の変動による影響を受けにくいディフェンシブ性が高い、ということです。実際に最近の米国株の戻りを牽引しているのは、ディフェンシブ業種やネット関連などのサービス業です。NASDAQが高値更新したことがその象徴です。

NYダウ2007年と2015年 20151104

前回は世界株式市場の下落の原因がサブ・プライムローン問題であり、いわば「震源地」だった米国株は2008年に大幅下落したのですが、今回は世界的株価下落の原因である世界景気サイクルのピークアウトからは、米国は最も遠い位置にあり、世界的に大底をつけるまで米国株の相対的ディフェンシブ性の高さは最後まで保たれるでしょう。

 

以上のことから以下のことが言えます。

1.米国とそれ以外の国の企業業績構造は大きく異なり、米国はディフェンシブ性が高い。そのため、米国株と比較してほかの国(日本も含めて)の株式市場が出遅れている、という議論は、いわば自動車株と食品株やネット関連株を比較するようなもので、まったく合理的ではない。

2.ショートカバー主導の世界的な株式市場の戻りは、値幅、期間ともに十分になりつつあり、米国株は目先高値更新まで上昇が続く可能性はあるものの、早晩、世界的に株式市場がピークアウトする。次の下落局面では米国株式も下落するものの、その下落率は相対的に最も小さくなる。