1日限りの強烈なリターン・リバーサル相場が示唆すること
昨日の日本株は、強烈なリターン・リバーサル、つまり業種に関係なく株価が大きく下落していた銘柄が広範囲に買われる動きとなりました。その代表が、シャープや東芝、建機、鉄鋼などです。昨日時点では、「日本株の押し目を買う動きであり、年末に向けて日本株は反発基調が続く」というようなコメントが散見されましたが、本日は早くも昨日の反動で、昨日大きく上昇した銘柄が広範囲で売られる動きとなっています。
「株価が大きく下落していた銘柄」は、主に業績不振が理由で株価が下落していた銘柄です。イケイケの上昇相場で、割り切って「ワケあり出遅れ銘柄」を買い時ならいざ知らず、現状は世界的な景気懸念が蔓延し、商品価格は低迷、世界的に株式市場はピークアウトから下落トレンド入りか、という状況です。そのような状況で「株価が大きく下落していた銘柄」を純粋に買う(ロング・ポジションを取る)動きをする投資家がいるとは思えず、買戻し(ショート・ポジションの解消)だった可能性が極めて高いと思います。
市場に出てくる行動は同じ「買い」でも、ロング・ポジションを取るための買いと、ショート・ポジションを解消するための買戻しとでは、リスクを取る行動か、リスクを解消する行動かということで、まったく意味合いが異なります。昨日は、株価が大きく下落していた銘柄が広範囲に買われる動きと同時に、その逆の株価が大きく上昇していた銘柄が広範囲に売られる動きも見られました。それを合わせて考えると、昨日は「大口のロング・ショート戦略のヘッジファンドが、大規模なポジション縮小(ロング・ポジションとショート・ポジション両方の解消)を行った」と考えられます。
ポジション解消の動きが、大規模な解約を受けてのものなのか、相場観によるものなのかはわかりません。しかし、資金の出し手の判断かファンド運用者の判断なのかが違うだけで、いずれにせよリスク縮小を決断した、ということです。その背景は当然、株式市場の上昇継続に対する疑問や下落に対する懸念でしょう。
相場は参加者の総意で動きます。つまり、「株式市場は下落トレンド入りしたのかもしれない」と思う参加者が増えれば増えるほど、実際の相場の動きは下落トレンドの様相を強めます。つまり昨日見られたような、1日限りの強烈なリターン・リバーサルの動きが示唆することは、「株式市場が下落トレンド入りしている可能性が一段と高まった」ということなのです。