米国雇用統計などを受けた当面の市場見通し
先週末に米国で1月の雇用統計が発表されましたが、注目の非農業部門雇用者は予想以上の増加、更にすでに発表されていた11月と12月の雇用者増加も大幅に上方修正されました。失業率は5.6%から5.7%へ若干悪化しましたが、これは労働参加率の上昇によるもので、雇用市場が好調であることを示唆します。(失業率=失業者数÷労働市場参加者数、職がなくても求職活動をしていない人は、失業者あるいは労働市場参加者とカウントされません。労働参加率の上昇=これまで求職活動をしていなかった人が求職活動を始めた、ということですから、求職活動により就職できる可能性が高まった、と感じている人が増加した、ということです。)
市場はこれを受けて、FRBが6月にも利上げをする可能性が高まった、ということで、米国長期金利は上昇(長期債市場は下落)、ドル円は円安ドル高進行、米国株は小幅下落という反応となりました。米国株式は戻り高値にありましたが、迫力のない企業業績に加えて強い雇用統計の発表を受け、景気好調を好感するよりも早期利上げ観測を嫌気した格好です。
今後のドル円の見通しですが、1.強い雇用統計を受け、あらためてFRBの次の行動は利上げであり、日銀の金融政策の方向性とは真逆であること、が確認され、ドル高基調は続くでしょう。しかし、2.日銀が目先更なる追加緩和に踏み切る可能性は極めて低く、米国の主要経済統計にドル円は左右されること、が予想され、一気に円安ドル高が進行するとは思えません。ただし、3.投機筋の円ショート(ドルロング)ポジションは非常に低水準であること、を考えると、株式市場の急落などのいわゆるリスクオフを受けても円高ドル安進行するエネルギーは限定的だと言えます。
以上の1.2.3.を考え併せると、ドル円はしばらくはボックス相場が続くが、ボックスのレンジを徐々に切り上げていき、最終的には上抜けする、という結論になります。ドルロング・ポジションの一部を使って、ボックス圏の上限近くではポジションを減らし、下限近くで買い直す、という対応がいいでしょう。ただし、いつ上抜けするか、は何とも言えませんので、いつ上抜けしても困らないように、トレーディング・ポジションは全体の一部に留めるべきでしょう。
日本株の見通しは、4.米国株を始め、世界的に景気先行きに対する不透明感が強まっている一方で、バリュエーションに全く割安感がないこと、を考えると、これ以上の上昇は正当化できない状況になっていると言えるでしょう。また日本では10-12月期業績の発表が続いていますが、ある証券会社のストラテジストによると、5.先週末までに業績発表をした東証1部銘柄の合計として、10-12月期営業利益は0.3%減だった(ドル円平均レートは2013.10-12月期の100.3円から2014.10-12月期は114.3円と14円も円安になったにもかかわらず)、という事実を考えると、円安ドル高進行で日本株が押し上げられるよりも、米国をはじめとする海外株式市場に左右される展開になる、と思われます。(参考までに1-3月期の会社予想営業利益は、前年同期比0.3%増だそうです。)しかし需給面では、6.しばらくは押し目ではGPIFや日銀の買いが入る一方で、多くの中長期外人投資家は目先は売り転換せずに様子見を続ける、と思われ、一気に下抜けするとは想定しにくい状況です。
以上の4.5.6.を考え併せると、日本株はドル円と逆で、しばらくはボックス相場が続くが、ボックスのレンジを徐々に切り下げていき、最終的には下抜けする、という結論です。したがって、いつ下抜けしても困らないように、買いから入ることは控え、ボックスの上限近くになったら売りから入り、下限近くになったら買い戻す、というトレーディングがいいでしょう。そしていざ下抜けしたら、買い戻した株価よりも下で売り直す、気持ちの切り替えが肝心でしょう。
現在のドル円、日本株の想定レンジは、それぞれ117-120円、17,000-18,000円です。これらのレンジを見直す時には、またお伝えします。