GPIF日本株買い余力に関する考察
日本株の上昇基調が続いています。その背景には明らかに、GPIFをはじめとする公的年金による日本株買い増しがあるでしょう。しかし東証が発表している主体別売買動向を見ると、信託銀行の買い越し額は2月後半から減少傾向で、3月第2週にはわずかではありますが売り越しに転じました。その間買い越し姿勢を強めているのは、外人投資家であり、特に彼らは先物に大量の買いを入れています。つまり、日経平均18,000円台半ばからの株価上昇は、公的年金の買いそのものではなく、それを材料にした外人投資家の買いが演出したものと言えるでしょう。
GPIFの基本ポートフォリオが昨年10月に変更され、国内株式の組み入れ比率の中心値が25%に引き上げられて以来、あとどのくらいの買い増し余力があるかが、折に触れ話題とされています。すでに公表されている昨年10-12月期の運用状況を見ると、国内株式の配分比率は12月末時点で19.8%でした。市場価格の変動を考慮して分析すると、GPIFは10-12月期に国内株式を約1兆8000億円買い増したことが分かります。主体別売買動向によると、同時期の信託銀行の買い増し額は約1兆6000億円でしたので、GPIF以外の年金が合計約2000億円を売り越したとすれば整合性が取れます。
年明け以降、外貨資産や国内債券に比べて、国内株式の上昇が際立っています。そのため、買い増しを行わなくとも、株価上昇だけで国内株式の配分比率は上昇しています。加えて、主体別売買動向から推計される1-3月期の約1兆2000億円の買い増しを加味しますと、市場の急変がなければ3月末の国内株式の配分比率は22.6%に達すると試算されます。配分比率を25%に引き上げるために12月末時点で約7兆1000億円あった買い増し余力は、3月末には約3兆4000億円に減少します。3兆7000億円の余力減少のうち2兆5000億円は、株価上昇によるものです。4月以降も日本株の上昇が継続すれば、6月末にも25%に達してしまい買い増し余力は無くなります。つまり、実際に公的年金がさほど買い増しを行わなくても、それを材料に投資家みんなが日本株を買い進めば進むほど、買い増し余力は減っていくのです。
更なる問題は、配分比率が25%に達して以降です。日本株が更に上昇したとすると、配分比率は25%を超えて増加し、買い増しは行えません。買い増しを行い、それが市場の下支え要因になるためには、日本株が下落して配分比率が減少しなければなりません。つまり、25%に達するまでは、公的年金の投資行動(日本株を買う)と、それを材料に動くその他の投資家の投資行動(日本株を買う)の方向性に相反は起こりませんが、25%に達して以降は、日本株が下落(その他の投資家が売る)しないと、公的年金は買い増しができないという相反が起こります。まさかその時に株高を演出し続けるために、日銀が猛然と日本株を買い上がるなどという事態は考えられません。日本株の「官製相場」の終焉は、そう遠くはないでしょう。