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2015年3月26日のマーケット・コメント

ドル円&潮目が変わった米国株

 

先週のFOMC以来、1.FRBが早期利上げに消極的になった、2.ドル高が米国経済にマイナスの影響を与える、などの理由から、ドル安基調が続いています。ドル円も例外ではなく、120円の壁が厚く、119円台での推移が続いています。すでに1.の見方が間違っているのではないか、という見方は3月19日付のコメントでご説明しました。そこで今回は2.の見方も間違っているのではないか、ということをご説明します。

 

ドル高が悪影響を及ぼすのは、米国から輸出されている品目です。JETROが取りまとめた米国の輸出入統計(http://www.jetro.go.jp/world/n_america/us/stat_05/)によれば、2013年には米国の輸出は総額で1兆5796億ドル、輸入は総額で2兆2683億ドルで、6887億ドルの貿易赤字(輸入超)でした。まずは総額で(米国全体としては)ドル高が悪影響ではなく好影響だ、ということがわかります。更に品目別に見ていくと、工業用原材料、自動車、消費財は輸入超、資本財はほぼ均衡であり、輸出超なのは食料品・飲料だけです。

 

ここまででお気づきの方もいらっしゃると思いますが、ドル高で悪影響を受けるのは農業従事者だけだ、ということが浮き彫りになります。農業従事者は日本と同様に、米国でも一定の政治家の支持基盤となっています。そのため、一部の政治家は農業従事者の声を代弁して「ドル高は悪影響だ」と主張するのです。その声に配慮して、FRBも声明にドル高の悪影響という表現を盛り込んだのでしょう。したがって、米国全体として本気で「ドル高は米国にとって悪影響だ」と考えているとは思えず、ドル高基調は崩れていないと考えるべきです。

 

昨年8月からサポートとして機能している75日移動平均線(現在119.15円)は割らずにキープしており、チャートはまだ崩れてはいません。75日移動平均線は割らないとすれば、現在の119円台前半は絶好の買い場です。もし75日移動平均線を明確に割り込んだら、最大で117円台前半までの調整の可能性が出てきますが、買い下がりスタンスで問題ないと思います。

 

昨日、米国株は大幅下落しました。このところ米国株は乱高下が続いていますので、「またか」と思われるかもしれませんが、下落を主導した銘柄を見ると、これまでの下がり方と違うことがわかります。昨日の下落を主導したのは、株価が直近まで好調に上昇してきたバイオやネット関連などの、いわゆるモメンタム株(成長イメージが強いがバリュエーションは割高な銘柄群)でした。つまり、今までの指数先物主導の乱高下とは違い、株価好調な割高株を売る、という動きです。現物株を減らす動きは、先物売買とは違い短期間では終わらない可能性が高いです。

 

現物株を売買する中長期投資家が株式全体を減らし始めたとすれば、当然売却対象には日本株も含まれます。しかし、それで「GPIF買い増し材料相場」が終わり下落基調に転じるのか、その売り物を吸収して日本株だけは反転するのか、もう少し見極めが必要です。ただ、ピークアウトの可能性を否定できない以上、押し目だと思って買い下がることはリスクが高い、ということだけは言えます。おすすめはしませんが、買いから入ってトレーディングするにしても、安値を買おうとするのではなく、ある程度戻りそこを確認してから行うべきでしょう。