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2015年3月9日のマーケット・コメント

雇用統計を受け、米国市場は素直な反応-今後の為替と株の見通し

 

先週金曜日に米国雇用統計が発表され、予想以上に強い数値に対して、FRBの早期利上げの可能性が高まったということで、米国市場ではドルが買われ、株が売られ、短期債が売られる(短期金利が上昇した)という、いわば教科書通りの反応をしました。以前からご説明しているように、利上げに関しての私の予想は「最初の利上げは6月。しかしその後は、機械的継続的に利上げをするのではなく、インフレを中心に経済データを見ながらの判断となる」です。今回の強い雇用統計は、その予想のあと押しです。

 

次の注目点は、3月18日のFOMC声明で「辛抱強く(Patiently)」という表現が削除されるかどうか、です。「辛抱強く」という言葉の意味は「向こう2回の会合では利上げを決めない」ということであることが、すでに明らかにされています。次回以降のFOMCのスケジュールは4月29日、6月17日、7月29日ですから、6月の利上げを可能にするためには3月18日の声明で「辛抱強く」が削除される必要があります。3月18日に削除されたとしても「6月17日に利上げをすることが決まったわけではない」と、FRBは強調するでしょうが、市場は6月利上げの可能性の一段の高まりを織り込んでいくでしょう。

 

為替はドルの独歩高だと思います。米国だけが大規模緩和終了から利上げの方向、日欧は大規模緩和継続の方向ですので、理屈通りの動きをして行く以外には考えられません。ドル円でもドルユーロでもドル高になるでしょうが、ユーロ円はどうなるかわかりません。弱い通貨同士で「どちらがより弱いか」は判然としませんので、ユーロ円でポジションを取ることなく、もっぱらドル円でドルロングで行くべきです。米国でのドル円の投機筋ポジションは、引き続きアベノミクス相場始まって以来の最低水準にあり、これは一旦動き始めると5-10円の値幅で水準訂正するパターンです。年末年始の上値抵抗水準の120円台後半を明確に抜けてきており、その水準を下回ってこない限り水準訂正が始まった可能性は高いと見るべきでしょう。

 

米国株は緩やかな下落トレンド入りする可能性が高いと思いますが、日本株はそれに遅行し、目先は素直に連れ安しない可能性が高いと思われます。圧倒的多数派は日本株には強気であり、その理由として、1.日本の企業業績は2015年度は15-20%増益と予想され、バリュエーションには割高感がない、2.GPIFを筆頭に国を挙げて株の買い増しに動いている。さらに米国の利上げに関しては、3.利上げをする米国株の上値が重いため、米国株から大規模緩和継続中の日本株とドイツを中心とする欧州株に資金シフトが起こる。これら強気派の主張は最終的には市場から疑われ日本株も下落トレンド入りするのですが、それが始まるには今しばらく時間が必要だ、と考えられます。

 

1.に関しては、ゴールデンウィーク前後に3月末決算企業の業績および時期業績見通しが発表される時期までは、業績懸念は本格化しない、逆にいえばそれ以降は懸念が出てくる可能性が高い、と言えるでしょう。2.に関してはすでにご説明した通り、今年9月末までにGPIFの日本株買い増しは終了する見込みです。3.に関しては、株式全体のポジションを変えずに国別配分を変えるファンド・マネージャー・レベルの動きでは一部そのようなこともあり得ますが、米国株が下落トレンド入りとなれば時間の問題でアセット・アロケーターは株式全体のポジション縮小を決め、保有株すべてが売却されることになるでしょう。以上合わせて考えると、日本株が下落トレンド入りするのは、最も早ければゴールデンウィーク前後、最も遅くても4-6月期業績が発表され、GPIFの買い増し終了が見えてくる8月、ということになります。