世界株式列車の先頭車両は米国株、最後尾は中国株&日本の企業業績発表
リーマンショック後の世界的な株式市場の上昇をけん引してきたのは、明らかに米国株でした。米国株は2009年3月に底打ちし、高値安値を切り上げ続ける形できれいに上昇基調をたどってきました。しかし、2014年12月以来、明らかに上値が重い展開となっており、2015年初来で見るとほとんど上昇していません。主要株式市場で最も低い上昇率です。上昇が止まった要因は、企業業績とバリュエーションのバランスで見て、かなりの割高感があることです。S&P500の今年の予想増益率は、わずか4%なのに対して、予想PERは18.0倍です。何か業績の足を引っ張る要因があるというのではなく、業績が伸び切ってしまった、という状態です。
米国株と対極に位置するのが中国株です。リーマンショック前の2007年末近くに高値を付けて以来、ずっと低迷が続いていましたが、2014年11月の金融緩和(利下げ)をきっかけに、直近まで急上昇が続いています。上海総合指数は2015年初来で約40%の上昇と、主要株式市場でダントツ1位の上昇率です。中国株上昇の背景には、経済成長鈍化や公共投資に絡む汚職の粛正などにより、官僚を含む国民全体にたまった経済的不満を払しょくさせるために、政府主導で株のバブル相場を創出している、ということでしょう。上海総合指数の今期予想PERは18.4倍に達しており、今年21%の増益が予想されているとしても全く正当化できない水準です。これまでは、中国には自由資本主義国には存在しない、国家管理経済としてのリスクがあるとして、PERは平均12倍の評価でした。
先頭車両の米国株と最後尾車両の中国株の、間に位置するのが日本株です。日本株はリーマンショック後もしばらく低迷が続きましたが、2012年11月から上昇を始め、現在に至っています。TOPIXの今期予想増益率は17%、それに基づく今期予想PERは15.9倍です。もしその増益予想が正しかったとしても、日本の企業業績構造において景気敏感依存度が米国よりも圧倒的に高い(米国企業業績構造はディフェンシブ依存度が高い)ため、歴史的に米国株のPERには他国よりもプレミアムが付けられていたことを考えると、米国株と比較したPER水準としては拡大余地のない水準だと言えます。
今週から日本の企業業績発表が本格化しています。すでに発表した企業を見ると、予想通り会社業績予想はコンセンサスよりもかなり控えめな数字となっており、株価は下落の反応をしている銘柄が散見されます。JSR(4185)、マツダ(7261)、富士電機(6504)、コマツ(6301)、日立建機(6305)などです。今後もこの傾向は続くと思われます。もし17%というTOPIX全体の増益予想に下ぶれ懸念が出てくるようだと、潜在的なPER上昇要因となり日本株には割高感が出てきます。
最後尾車両の中国株がピークアウトする時、それが世界株式市場の調整の始まりになるでしょう。それがいつごろなのか予想することは困難ですが、中国株の激しい上昇を考えると、それが長期間続くとは思えず、数カ月以内にはピークアウトする時が来る、と思われます。また、日本の1980年代やネットバブルのように、バブル相場は上昇すればするほどその後の被害が大きくなります。日本株が米国株に続き、上げ止まってしばらくしてから中国株のピークアウトが来るのか、中国株のピークアウトまで日本株の上昇が続くのか、どちらの可能性もあります。すなわち、日本か米国同様の自由資本主義国なので米国に近い、とも思えますし、国を挙げて株高を演出しているので中国に近い、とも思えるということです。
目先は控えめな会社予想の発表が相次ぐと予想されることを考えると、少なくとも業績懸念が払しょくされる秋頃までは上値は追いにくくなる可能性が高いと思いますので、私は「日本は米国寄り」すなわち「上げ止まってしばらくしてから中国株のピークアウトが来る」と考えています。