イエレン議長講演内容から予想されるFRBの行動
先週金曜日にイエレンFRB議長が、米国で講演を行いました。その内容は以下の通りでした。
1.米国経済は緩やかな成長を続けている。
2.現在はまだ、強いインフレ加速要因は無い。
3.インフレ加速要因が出てから利上げするのでは遅い。
4.年内に初回の利上げが決定される可能性は高い。
5.初回の利上げがあっても、それ以降継続的に利上げを続けるということではなく、利上げの規模も時期も経済データ次第である。
このように内容は、(当然ですが)これまでのFOMC声明と完全に一致しています。今後長期間ゼロ金利政策を続けたら、資産バブルに繋がる恐れがあり、バブル崩壊により経済が大打撃を受けるよりは、バブルを未然に潰し、打撃の大きさを抑えるべきだ、と考えていると言えます。特に、最近株価上昇の上値が重くなったこともあり、ジャンク債(低格付けの高利回り債券)が買われてきており、バブル発生懸念を強めてきているのでしょう。
一方で、FRBとしては市場に「サプライズ」を与えたくない、という意向はあるでしょう。私は6月利上げをずっと予想してきましたが、その意見は今やごく少数になっており、年内利上げを予想する人々の、時期のコンセンサスは9月になっています。この状態での6月利上げはサプライズとなるため、6月のFOMCでは9月利上げを予告する内容となり、9月まで時間をかけて市場に利上げを織り込ませる、ということになる可能性が高いと思います。6月17日までに、FOMCメンバーが講演などで6月利上げを示唆し、市場に6月利上げを織り込ませるという可能性も全くないわけではないですが、ちょっと時間がなさすぎるように思います。
強い米国CPI発表と講演を受けてドルが上昇し、ドル円は121円台後半まで円安ドル高が進行していることを見ると、市場は「6月利上げ予告、9月利上げ決定」という上記のシナリオを織り込み始めた可能性が高いです。まだ年内利上げはないという意見も多いため、6月のFOMCまでは経済指標に一喜一憂する展開が続き、一気に円安ドル高が進行するということは考えにくいですが、あまり押し目を欲張るべきではない状況であることは確かでしょう。これまでは118.50円がボックスの下限で、119円近辺からの買い下がりが有効でしたが、買い下がり始める水準をもう少し引き上げるべき、ということです。120円近辺からでしょうか。また一気に水準訂正が起こる可能性もあるため、以前からお勧めしている「大台替わり記念買い」も有効だと思います。
日本株は、欧米株下落にもかかわらず、本日も上昇しています。売買代金は少なく、完全に「先物主導のトレーディング相場」の様相です。いずれ高値圏で急落して終わるのだと思いますが、それが確認されるまでは静観するしかありません。