「ギリシャ&中国」続報
ギリシャと中国に関して続報です。
まずギリシャですが、昨晩「債権者側が提示した財政再建案を受け入れると、チプラス首相から親書が届いた」との報道を受けて、世界的に株は急上昇、ユーロも急上昇、ドル円も円安ドル高進行となりました。しかしその後、誤報だと判明すると、ユーロは急反落しましたが、ドル円は予想よりも強いADP雇用統計発表を受けて続伸しました。株は誤報だと判明し、やや反落しましたが、基本的には高止まりしたままでした。
目先の焦点は明らかに7月5日のギリシャ国民投票の結果ですが、世論調査での受け入れ賛成増加(それでもまだ受け入れ反対が過半数)を受けて、株式市場は国民投票での受け入れ賛成を織り込んでいるようです。一方で、為替市場や債券市場では「どっちに転ぶかわからない」という織りこみのようです。
国民投票の結果は、ギリシャ国民が投票の意味をどうのようにとらえるか次第だと思います。債権者側からは、予想通り「国民投票は、今回提示された再建案を受け入れるかどうかにとどまらず、ギリシャがユーロやEUから離脱するかどうかの選択だ」との発言が相次いでいます。一方でチプラス首相は「国民投票はあくまでも今回提示された再建案を受け入れるかどうかの選択で、ユーロやEUからの離脱とは関係ない。反対票が多ければ多いほど、その後の再建案交渉の武器になる。」としています。
どこの国でも同じですが、「国民」は近視眼的判断をします。そもそもチプラス政権は「反緊縮」を公約にして選挙に勝ち、誕生しました。国民にとっては「緊縮(歳出削減)」=「もらえるものが少なくなる」であり、「中長期的視点に立って国家のことを考えれば、財政再建のためには不可欠」ではないのです。また、他国(今回でいえば債権者国)の首脳が言っていることと、自国の首脳が言っていることが違う場合、やはり自国の首脳に耳を貸すでしょう。以上からは、反対多数になる可能性が高い、という結論になります。
ただ、今週明けからの銀行の資本規制に伴う預金引き出し制限などの措置は、明らかに国民にとっては「嫌な状況」です。先週までは緊縮財政反対でも、超近視眼的判断により、「今週の嫌な状況を元に戻してもらえるなら緊縮財政賛成」となる国民が少なからずいると考えられます。最終的な結論は、どっちに転ぶかわからない、つまり為替市場や債券市場の織り込みが正しく、株式市場の織り込みは楽観的過ぎる、ということです。国民投票の結果が「受け入れ反対」となれば、週明けの株式市場にとってはネガティブ・サプライズとなるでしょう。
国民投票の結果が受け入れ賛成になれば、チプラス政権は退陣、総選挙、となるのは確実ですが、受け入れ反対になった場合、受け入れには反対だがユーロやEUからは出ていかない、と居直られ、それに対して債権者側がどういう対抗措置を取るかは不透明です。対IMFの延滞ばかりでなく、対民間のデフォルトも発生するでしょう。融資がなければギリシャ財政は回らないのは厳然たる事実なので、混乱状態が長期にわたることはないでしょうが、今夏いっぱいくらい続く可能性はあります。
次に中国です。株暴落を受けて、中国政府は養老年金(日本のGPIFに相当)での株式運用解禁など、株価下支え策を打ち出し、それを受けて6月30日には中国株は急反発しました。しかし、昨日本日と反落し直近安値の更新を伺う動きになっています。中国株市場の参加者の多くは中国の個人投資家です。個人投資家の証券口座は9,000万口座あるそうです。余裕資金がなければ株式投資家できませんから、9,000万口座の保有者は富裕層寄りの人であり、消費の下支え効果が大きい人だと言えるでしょう。つまり、株下落による逆資産効果を通じた消費下押し効果はかなり大きいものと考えられます。株下落と消費の落ち込みには数カ月のタイムラグがありますので、8月9月あたりから中国消費の落ち込みに関する報道が出始めると思われます。