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2015年7月9日のマーケット・コメント

もはや円は避難通貨ではない-円高反応はごく短期

 

かつて円は「安全通貨」であり、リスクオフのときの「避難通貨」とみなされていました。その理由は、

1.日本は政府債務は多額だが、そのほとんどが国内消化されている。

2.国内消化の原資である個人金融資産は、政府債務残高を大きく上回っており、消化余力はまだまだ大きい。

3.上記を反映して、基調としては円高進行である。

 

しかし今や、

1.日本の政府債務は大きくなり過ぎ、また金利水準が低すぎるため、国内一般投資家では消化できない。そこで日銀が大量の国債買い入れをするという、事実上の財政ファイナンス(財政赤字を中央銀行が引き受けること)を行っている。

2.日銀の国債買い入れの出口は見えない。

3.上記を反映して、基調としては円安進行してきた。

です。もはや「安全通貨」どころか、新興国通貨並みに「危険通貨」なのです。

 

しかし、足元ではリスクオフ姿勢から円が買われています。おそらくその背景は、投資家が「避難通貨として円を買っている」のではなく、投機家が「ドルロング&円ショート・ポジションをクローズしている」だと思われます。

 

「円は安全通貨だから、リスクオフ姿勢の高まりから円が買われている」という解説は、アナリストやコメンテーターなど、自分でポジションを取らない評論家の立場の人々がしています。しかし、実際にポジションを取る投資家(特に中長期投資家)は、上述のもはや円は安全通貨などではない、ということを理解しているはずです。

 

直近のシカゴ筋ポジションや、日本のF/X業者のポジションを見ると、短期投資家が取っているポジションの方向はまだ「ドルロング&円ショート」でした。「彼らがリスク回避姿勢を高める」=「ポジションを手じまう」=「ドル売り&円買い」というメカニズムだと思われます。その動きはごく短期間のものであり、今日明日にも終わってしまう可能性もあります。最終的には、短期投資家のポジションが「ドルショート&円ロング」に傾き、それが将来の円安ドル高進行のエネルギーになるでしょう。