最近の株式市場動向の背景とこれから起こること
7月21日のコメントで、「世界的に株式市場で、景気敏感銘柄のパフォーマンスが悪く、内需・ディフェンシブ銘柄のパフォーマンスが良好。この背景は、世界的に株式市場参加者は世界景気の減速を最大のリスクとして捉えていることの表れ。」ということをご説明しました。この傾向は、4-6月期業績発表を受けて、さらに強まっています。
業績動向がおもわしくなかったファナック(6954)、三菱電機(6503)、オムロン(6645)、川崎重工(7012)などの株価が下落しているのは当然としても、今日は村田製作所(6981)、TDK(6762)、住友化学(4005)、帝人(3401)など、すでに業績発表を終え、その内容には問題無かった銘柄が大きく下落しています。つまり、足元ですでに変調をきたしている銘柄ばかりか、足元は問題なくても将来の業績ピークアウトを織り込んできています。
最近の、景気敏感銘柄が売られ、内需・ディフェンシブ銘柄が買われるという現象は、たびたびご説明するファンド・マネージャーとアセット・アロケーターの役割分担を考えると、明解に理解できます。各資産クラス(たとえば日本株)の運用を担当するファンド・マネージャーの役割は、フル・インベストメント(キャッシュ・ポジションを持てない)での運用で、各資産クラスのベンチマーク(たとえばTOPIX)をアウト・パフォームすることです。世界的な景気減速がリスクだ、とファンド・マネージャーが判断したら、景気敏感銘柄を減らし、内需・ディフェンシブ銘柄を増やすことしか、対応策は無いのです。キャッシュにして置いておく、という選択肢は無いからです。また、ファンド・マネージャーは日々銘柄入れ替えを行いますので、彼らの動きはいち早く相場に反映されます。
一方、アセット・アロケーターの役割は、投資資金全体の資産配分を決めることです。たとえば投資資金全体が100だとして、株式50、債券40、不動産10というような配分を決め、さらに株式のうち10%を日本株というように決める役割です。アセット・アロケーターの動きは、ファンド・マネージャーに比べ緩慢で、かつ明確に順張りです。最近の市場動向を見ると、まだアセット・アロケーターが「株を減らす」という配分変更を行っていないことが伺えます。
しかし、景気敏感銘柄の業績動向に陰るが見え始め、その結果、景気敏感銘柄全般が下落し、指数全体も上値の重い軟調な展開が続けば、いずれアセット・アロケーターは資産配分において株式の削減を決定するでしょう。上記の例でいうと、「株式を50から30に削減し、その分債券を40から60に増やす」というような変更です。そうなると日本株の配分比率は50の10%の5から30の10%の3に減らされる、ということになります。そのような変更が行われた場合、ファンド・マネージャーが取る行動はただ一つです。持っている全銘柄を4割売却するしかないのです。そうなると、業種間の格差は消え、いかにも機関投資家が保有していそうな銘柄が、全業種にわたって売られ、その結果、指数も大幅に下落します。
前回のサイクルでそれが始まったのが、ちょうど8年前の2007年7月から8月でした。今の日本株の状況はその当時と非常に似ています。その当時とその後、どのような株価動向だったか、振り返っていただければ、今後時間の問題で起こることが容易に想像できるでしょう。