もし利上げが見送られた場合の市場反応予想
私は、今回のFOMCで初回の利上げが決定される、と考えていますので、これまで利上げ決定を前提に市場反応予想をご説明してきましたが、当然「絶対に」利上げがある、ということはないため、今回はもし利上げが見送られた場合の市場反応を考えます。
今回の利上げが見送られた場合、1.今回は見送るが年内に最低1回は利上げを行うというスタンスは維持、2.今回利上げを見送り、年内最低1回の利上げを行うというスタンスも撤回、という2つの可能性があります。中央銀行の一貫性を考えると2.の可能性は極めて低いため、1.を前提にご説明します。1.で重要なことは、今回利上げがなくても10月か12月にはあるという予想になる、ということです。
まず、ドル円です。ドル円の反応を考える上で最も重要なことは、短期ポジションがほとんど整理されて、どちらの方向にもベットが見られない、ということです。8月24日の週にドル円が大幅に動いた時に、短期ポジションがほとんど整理され、今に至るまで変わっていない、ということはシカゴ筋ポジションなど複数のデータから明確です。過去何度か、日経新聞などメディアで記事にもなっています。ということは、利上げが見送られても、利上げにベットしているポジションがない以上、ポジション整理は起こりようがありません。また、利上げがあった場合のドルキャリー取引の巻き戻しのような新たな資金フローは、利上げが見送られた場合一切起こりません。したがって、利上げが見送られた場合はドル円は基本的には動かない、と予想されます。
次に株です。株式市場では「もし利上げがあったら株は急落する」という意見が多いようです。カラ売り比率が依然高水準であることや、プット・オプションのインプライド・ボラティリティ(IV)が高止まりしていることを考えても、短期投資家のポジションはショート(カラ売り)に傾いている可能性が高いと思われます。利上げが見送られた場合、ショートの買い戻しで小幅反発、しかしその後、利上げが10月か12月かという議論に移行し、広いレンジでのもみ合いが今月いっぱい続く、と予想します。
以上は上記の1.を前提にしています。あまり考えたくないのが、2.の場合です。この場合「FRBはマーケット・フレンドリーだ」と好意的に受け止める市場関係者も少なくないでしょう。しかしそんな能天気なことではないのです。「2014年10月のQE3終了以来、長い時間をかけて2015年内の利上げ開始に向けて地ならしを続けてきたFRBが、利上げの条件としてきた米国経済データが良好にもかかわらず、短期的な市場変動により金融政策をぶらしてきた」ということになり、市場からFRBの政策スタンスが全く分からなくなり、FRBに対する信認は著しく損なわれます。その場合、発表直後はドル安米国株高の反応をするかもしれませんが、時間の問題で市場は「世界的なリスク・オフ」の反応となるでしょう。
いずれにせよ、私は「利上げがある」と思っていますので、上記のコメントは無駄になることになると思いますが。