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2016年11月8日のマーケット・コメント

大統領選前日に米国株大幅上昇の意味するところ

 

昨日、米国株は9日続落の後、2%を越える大幅上昇となりました。FBIがクリントン氏を訴追しない、と発表したことを受けてリスク回避ムードが収まったから、と解説されていますが、実情は違うでしょう。理由は以下の通りです。

 

1.上昇でも下落でも大幅に相場が動くときは「リスクを減らす行為」が原動力

短期、中期、長期と投資期間の違いはあっても、市場参加者は「リスクを取る行為」は時間をかけて行ない、「リスクを減らす行為」は短期遺憾のうちに行なうものです。大統領選という、不確定なビッグイベントの前日に思い切ってリスクを取る投資家が多数存在するとは思えません。「大幅上昇」=「リスクを減らす行為」だとすれば、カラ売りの買戻し(ポジションの解消=リスクを減らす行為)が主導した、と考えられます。

 

2.出来高増加を伴っていない

昨日のS&P500の出来高は、約6億900万株でした。これは過去30日間平均出来高と同水準であり、先週金曜日の約6億2500万株よりも少なかったのです。上昇にせよ下落にせよ、それまでのトレンドが転換する際に起こる大幅な変化には、必ず出来高の増加を伴います。出来高の増加を伴っていないことは、昨日の急反発は「下落トレンドの途中の急激な調整」だといえます。

 

結論として昨日の米国株急反発は、短期投資家のカラ売りポジションが一気に買い戻されたことが背景(中長期投資家は動かず)、といえます。つまり、「買い戻し」という買いエネルギーは一気に放出されてしまったということであり、大統領選の結果がどちらになろうと、買い戻しという買い需要は消滅した状況になった、ということです。米国株は、クリントン勝利なら選挙後はゆっくりと下落、トランプ勝利なら急激に下落、となる可能性が高いといえます。