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2016年2月8日のマーケット・コメント

米国雇用統計の評価

 

先週金曜日に米国で雇用統計が発表されました。非農業部門雇用者数変化が、事前予想の19万人増加に対して15万人増加にとどまったことから、日経新聞など報道では「雇用統計は弱かった。3月利上げは難しくなった。」と評価していますが、それは誤りです。非農業部門雇用者変化は、後に5万人程度は修正されるほど大雑把な数値であり、予想に比べてあまりにも弱かったのならまだしも、予想に4万人足りなかったことはFRBにとってさほど重要ではないからです。注目すべきは、平均時給が12月に0.0%増、1月の事前予想が0.3%増だったのに対して0.5%増だったことです。明らかな時給増加であり、インフレ制御を目的とするFRBの金融政策を考える上できわめて重要です。今回の雇用統計発表で、3月利上げは難しくなったどころか、むしろ3月利上げの可能性が高まった、と評価すべきです。

 

現に為替市場の反応は、ドルのほぼ全面高でした。ドル円は結局ほぼ横ばいで終わりましたが、雇用統計発表後は一時117.44円まで円安ドル高となりました。2日続けてドルが大幅下落した後、ということを考えれば、まだまだドルの戻り余地は少なくないでしょう。次の注目点は2月10日のイエレンFRB議長の議会証言です。当然、3月利上げの可能性を排除するはずもなく、ドルが続伸する材料になる可能性は高いと見ます。

 

金曜日の米国株式市場での注目点ですが、雇用統計発表で下落の背景は、「雇用統計が弱かったことでさすがの米国経済も悪影響を受けてきた」ということを嫌気したとも取れますが、「3月利上げの可能性が高まった」ことを嫌気したとも取れます。私は後者の解釈です。最大の注目点は、インターネット関連銘柄を中心に高バリュエーションの成長株(いわゆるモメンタム・ストック)が大幅下落したことです。運用者が市場下落に本格的に備え始めたことを裏付ける大きな証拠です。