ECB会合を受けて
昨日のECB会合での決定事項は、1.マイナス金利の幅を0.3%から0.4%に拡大、2.国債買い入れを毎月600億ユーロから800億ユーロに増額、でした。発表後しばらくは、昨日のコメントで予想したとおり、市場の反応はポジティブでした。ところが、発表後の会見でドラギ総裁が「金利のマイナス幅をこれ以上拡大させることはない」と発言したことをきっかけに、いわゆる「打ち止め感」「出尽くし感」が市場に広がり、ユーロは反騰、株は下落という反応に変わりました。以前はたいしたことのない内容の政策を、ドラギ総裁が上手に説明して、市場から好反応を引き出す、いわゆる「ドラギ・マジック」の使い手でしたが、今回は真逆に、かなりの規模の内容を下手な発言で台無しにしてしまう事態となったわけです。
よくわからないのが東京市場での動きです。欧米株安、円高ドル安を引き継ぎ、安く始まったものの、日本株はプラスに転じ、更に上値を追う展開になっています。今日話した人が「ECBが動いたことで日銀は動きやすくなりましたね。ECBが動くなら日銀もっていう具合に。」と言っていました。今回のECBに続き、日銀が来週15日に追加緩和に動くことを織り込んでいるのだとすれば、15日には失望に終わる可能性が高いでしょう。
私は「今回ECBが動いて、さらにそれに対する市場からの反応が複雑だったことにより、日銀は極めて動きづらくなった」と感じています。上海でのG20で「市場の急激な変動を抑制するのは構わないが、通貨安競争をするのは慎むべき」ということになりました。「ECBが動くのなら日銀も」というのがまさに通貨安競争でしょう。更に国際社会から批判されるリスクを取って日銀が動いたとしても、市場から「打ち止め」「出尽くし」と捉えられ、もはや市場が好反応するとは限らない、ということが今回で示されました。動けば国際社会から批判を受けるリスクがあり、更に動いたとしてもうまくいく保証はない、という状況で、はたして日銀は動くのでしょうか?
動くとすればFRBだと思います。16日のFOMCでの利上げ予想は少数です。しかし、これまで利上げを見送る理由とされていた「市場の混乱」は、米国株、原油価格とも堅調に推移し、また以前議論の対象になっていた「過度なドル高」も是正が進んでいます。16日の利上げ決定はサプライズになるため、サプライズ嫌いのイエレン議長は「6月利上げ予告」にとどめるかもしれませんが、利上げ意欲の上方修正にはなるでしょう。