EU離脱の織り込みは完全に解消
先週イギリスでコックス議員殺害というショッキングな事件があり、それを契機に離脱派の勢いが弱まるとの観測が広がり、先週金曜日にショートカバー主導で市場は反発、更に週末の世論調査で実際に残留派が増加し離脱派が減少したと伝えられ、昨日は一気にショートカバーが入り、大幅反発しました。
本日も日本株は小幅続伸となっていますが、過去2日間とは明らかに「上げ方」が異なっています。過去2日間はいかにもカラ売りが入っていそうな、業績懸念のある景気敏感銘柄が大きく上昇していたのに対し、本日は「景気敏感売り、内需・ディフェンシブ買い」という銘柄入れ替えが行なわれていることが伺える「上げ方」です。短期投資家のカラ売りのショートカバーは昨日ですでに終わり、ファンド・マネージャーが市場下落に備えてポートフォリオをディフェンシブ化していると推察されます。
Brexit投票をめぐる市場の織り込みを振り返ると、6月10日までは「おそらく残留だろうが、一抹の不安が残る」という織り込みでしたが、6月12日の世論調査で離脱派が明確に残留派を上回ったという報道を受け、6月13日から6月16日まで「離脱の可能性がある」ということを織り込み、その後6月16日の議員殺害を受けて、「おそらく残留だろう」という織り込みに戻っています。6月10日の日経平均は16,601円でしたが、6月16日に日銀が動かなかったこと、およびそれ故にドル円は6月10日の107.00円から3円円高進行していることを考えると、現在の日経平均16,000円は「織り込みが元に戻った水準」と考えられます。
それは欧米株の動きでもわかります。NYダウは6月10日引け17,865に対し、昨日引け17,805とほぼ同水準まで戻していますし、イギリスのFTは6月10日引け6,116に対し、昨日引け6,204、ドイツのDAXは6月10日引け9,835に対し、昨日引け9,962と、6月10日の水準を上回るまで反発しています。
このことから言えるのは、「6月23日の投票結果が残留と決まっても、株式市場はほとんど上昇しないと想定される」ということです。織り込みが事実に変わることで、限界的な不透明感の消滅により、一時的に多少上昇する可能性はありますが、ごく短期的な反応に留まると思われます。逆にもし離脱と決まったら、それは織り込みとは逆の結果ということになり、世界的に大暴落となる、ということです。