今週は銘柄入れ替え、来週から配分変更か
イギリスのEU離脱決定を受けて、先週金曜日の日本株は業種間でも業種内でも下落率の差があまりない、いわゆる全面安でした。しかし、昨日今日は明らかに、景気敏感銘柄売り、内需・ディフェンシブ買いの銘柄入れ替えの動きとなっています。景気敏感業種の中でも、すべての銘柄が売られているわけではなく、業績好調な銘柄や国際競争力の高い銘柄は買われています。これは明らかに、ファンド・マネージャーが銘柄入れ替えにより、ポートフォリオのディフェンシブ性を高めている動きが背景にあると思われます。
これまで何度かご説明してきましたが、中長期投資家の資産運用は、各資産クラスの運用を担当するファンド・マネージャーと、各資産クラスへの資金配分比率を決めるアセット・アロケーターで役割分担して行なわれています。ファンド・マネージャーは決められた配分資金を、基本的にはすべて投資に回し(フル・インベストメントを保ち)、各資産クラスのベンチマークを上回る運用成績を達成することを目指します。つまり、現金比率を高める、という選択肢はありません。したがって、市場に下落リスクを感じたときには、ポートフォリオのディフェンシブ性を高めることで、市場(ベンチマーク)の下落率よりもポートフォリオの下落率が低くなるようにします。ファンド・マネージャーは銘柄入れ替えという活動を、随時行うことができます。
一方、アセット・アロケーターの資産配分変更は、随時行なわれるものではありません。中長期投資家の顧客は、年金基金やSWF(ソブリン・ウェルス・ファンド)などですが、運用会社は四半期ごとに顧客に、終わった四半期の運用状況と始まった四半期の市場見通しとそれに基づく資金配分を説明します。(これを「レポーティング」といいます。)そのため、資産配分比率の見直しは、四半期ごとに行なわれます。
今回で言うと、今月で4-6月期が終わり、資産配分の見直しを行い、7月中に7-9月期の見通しとそれに基づく資産配分の変更を説明します。その際に「イギリスのEU離脱決定という予想外の事態を受けて、リスク回避的に資産配分の変更を行ないます」という説明は非常に行ないやすいでしょう。つまり、7月になると世界的に株式への資産配分を削減し、信用力の高い国の国債などの非リスク資産への資産配分を増加させる、という動きが出てくる可能性が高いと思います。
6月13日付のコメントでもご説明したように、初期は、
「ファンド・マネージャーが業績動向に沿って銘柄を入れ替える。(下落を牽引するのは業績懸念がある銘柄。)」
ですが、中長期投資家のアセット・アロケーターが株式の削減に動いた場合、
「さらに市場全体は下落する。(下落を牽引するのはファンド・マネージャーが保有している銘柄。すなわち、好業績銘柄が下落を牽引。)」
となることが想定されます。