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2016年8月2日のマーケット・コメント

ETF買い入れ増額で日本株の大幅下落はやや先送りか

 

都合により、先週情報発信できず申し訳ありませんでした。

 

7月29日の日銀決定会合で、日銀はETFの買い入れ額を年間6兆円に増額することを決めました。これを受けて市場では「日銀が6兆円買えば、もし外人投資化が売り越してきても吸収できる」「日経平均を2,000-3,000円押し上げる効果がある」といった意見が台頭してきました。そこで実情を考えます。

 

日銀によるETFの買い入れは2010年12月に始められました。その際の根拠法には「市場インパクトを与えないような買い方をする」と明文化されています。それが制約となり、「原則として市場下落している日に買い入れを行う」「買い入れ額は1日に数百億円にとどめる」という、日銀の買い入れ手法となっています。買い入れ額が増額されても、この制約は変わりません。これまで年間3兆円だった時期は、1日当たり約3百数十億円の買い入れでしたので、年間6兆円になれば1日あたり700億円程度にするのか、あるいは買い入れ出動の基準を緩めて買い入れ頻度を上げるか、どちらかの対応となるでしょう。つまり、日銀のETF買い入れは、下落のブレーキ要因にはなっても、上昇要因になることはない、ということです。

 

では過去どの程度、下落のブレーキ要因になったか、検証してみます。今年各月の日銀のETF買い入れ額と日経平均の動きは以下の通りでした。1月:買い入れ額3,200億円(日経平均7.5%下落)、2月:2,700億円(9.4%下落)、3月:700億円(3.8%上昇)、4月:3,000億円(0.5%下落)、5月:2,100億円(2.9%上昇)、6月:4,200億円(9.7%下落)、7月:2,700億円(6.2%上昇)。

 

以上から言える事は、「日銀が買い入れを行っていなかったら、下落はもう少し大きく、上昇はもう少し少なくなっていたかもしれないが、基本的には日銀が粛々と買い入れを行っていても、市場はそれとほぼ関係なく上昇下落してきた」ということであり、これは今後も同様でしょう。つまり、実需としての日銀ETF買い入れによる市場の下支え効果は、これまで同様、ほぼ見えないと考えられます。

 

とはいえ、短期的には市場心理の改善要因であることは事実であり、目先は短期投資家が売り仕掛けをしにくくなると思われ、世界同時株安の動きが再び明確になるまでは、下値サポート要因になると思われます。日本の企業業績は予想通り悪化しており、いずれ日本株は下落するという予想に変更ありませんが、目先は現状水準でのもみ合いが続き、日本株の大幅下落はやや先送りになった、と考えます。