当面の市場見通し-米国雇用統計を控えて
先週末の、イエレン議長のジャクソンホールでの講演を期に、為替市場では9月利上げの可能性の高まりを織り込む動きになっています。同講演で「雇用統計は3ヶ月移動平均で見ている」との発言がありました。本日の米国雇用統計が注目ですが、過去2回発表分が強い数値だったため、非農業部門雇用者変化の今回の市場予想は18万人増ですが、15万人程度よりも多ければ9月利上げの可能性はさらに高まり、市場反応もそれに添った形になるでしょう。つまり、利上げ確率を高めるための今回の雇用統計のハードルは高くない、ということです。
もし雇用統計が上記の条件を満たせば、本日の米国市場での市場反応はドル上昇、米国株小幅下落、米国債券小幅下落、新興国通貨下落、商品市場下落、となることが予想されます。しかし、9月21日のFOMCで実際の決定がなされるまでは、一方的に織り込みが進み上記反応が続くとは思えません。G20は材料になるとは思えず、今月は企業業績発表などの材料もないため、9月21日まではボラティリティが低いまま、緩やかに上記反応が断続的に出る、という展開が想定されます。ドル円の上限は105円程度、日経平均は75日移動平均線(現在16,357円)と200日移動平均線(現在17,047円)の間でのもみ合い、というイメージです。
「雇用統計は利上げ確立上昇のハードルを満たす」がメインシナリオですが、もし雇用統計がハードルを下回る弱い数値の場合、市場はFRBの政策変更を見極められなくなり、いわゆるリスク・オフの反応となるでしょう。すなわち米国株大幅下落、米国債券堅調となり、ドル円はドル下落とリスク・オフの円買いのダブルで円高ドル安となるでしょう。日経平均は16,000円トライ、ドル円は100円トライまでは下落すると思います。
さて、メインシナリオ通りだった場合の続きです。世界中が9月21日のFOMCに注目していくわけですが、日本では同日に日銀決定会合があります。同日ということは、時差の関係で日銀決定会合がFOMCよりも14-15時間早く発表されます。市場のボラティリティが低い状態で決定会合を迎える可能性が高く、その場合、日銀はFRBの決定の直前に大きな政策変更を決めてくるとは思えず、9月21日の決定会合では政策変更なし、でしょう。それを受けて日本市場では、日本株下落、円高ドル安進行となり、同日のFOMCで利上げ決定となれば、円安ドル高に戻るでしょう。イブニングの日経平均先物は米国株の反応次第だと思います。(利上げ決定直後の米国株の反応は読めません。米国株の短期投資家は「金利上昇を嫌気して下落する」のか「利上げできるほど米国経済は強いことを好感して上昇する」のか、どちらになるのでしょうか?)
利上げ決定の場合、少し時間を置いて、中長期投資家が「米国利上げ」→「新興国通貨下落、商品市況下落」→「新興国経済は一段と悪化」→「企業業績に悪影響」というロジックから、再びグローバルに株式配分比率を下げる、すなわちグローバルに株を売ってくることが想定されます。前回も12月16日に利上げが決められ、クリスマス休暇を経て、年明けから中長期投資家の株売りが始まりました。今回は休暇は無いので、9月中にその動きが出始めても不思議は無く、四半期が切り替わる10月初めからはその動きが本格化していくでしょう。(中長期投資家の資産配分見直しは、多くの場合、四半期ごとに行なわれるため。)
日本企業の今期企業業績予想は、会社予想もコンセンサスも下期(10-3月期)回復シナリオですが、そのような動きになれば、当然下期回復シナリオに対する懸念が急浮上し、日本株は景気敏感業種主導での大幅下落となるでしょう。9月21日以降の日銀決定会合は11月2日、12月14日が予定されていますが、会合のときの株価水準次第で、どちらかの会合で「量の拡大」すなわち国債買い入れ額の増額に踏み切らざるを得なくなり、その政策変更は海外から「ヘリコプター・マネー」だと批判的にみなされ始め、ドルの上昇下落とは関係なく、「円が売られる」状態が始まるでしょう。