トランプ新大統領発言の内部矛盾で市場はリスク・オフを強めるか
昨日、トランプ新大統領が米紙(ウォール・ストリート・ジャーナル)とのインタビューで、「すでに米ドルは強すぎる」と発言したことが報じられました。その発言を受けて、為替市場では米ドル下落、新興国通貨上昇、ドル円も112円台への円高ドル安となりました。また注目すべきは、その発言を受けて米国株が下落の反応をしたことです。以前は、「ドル高は米国企業業績の圧迫要因」とされ、米ドルと米国株は逆相関の関係でしたが、大統領選挙後は明らかに米ドル上昇、米国株上昇となっており、昨日は米ドル下落、米国株下落で、米ドルと米国株が順相関であることが確認されました。
米大統領選挙後の市場反応は明らかに、トランプ新政権が打ち出している大型減税と大型財政出動が、米国経済にもたらすであろう好影響への期待です。経済への好影響期待が米国企業業績拡大期待に繋がり、米国株上昇となり、また期待インフレ率が上昇し、米国長期金利上昇に繋がり、各国との金利差拡大からドル高となったわけです。つまり、トランプ新政権が、本当にこれまで打ち出してきた経済政策を実行するのであれば、米ドル上昇は不可避であり、米ドル下落を望むのは内部矛盾なのです。
にもかかわらず、「米ドルは高すぎる」と発言したということは、以下の可能性が考えられます。
1.トランプ新大統領は、経済政策が市場にどのような影響をもたらすかについて、十分な理解がない。(場当たり的な発言をする結果、両立し得ない「いいとこ取り」を主張している。)
2.これまで主張していた大型減税、大型財政出動の実行に、不安要素を感じ始めている。(当選後、保護主義的貿易政策に関する発言は多数あったが、大型減税や大型財政出動に関しては、ほとんど発言がなかった。当選後、経済政策実行を真剣に考え、財源問題など一筋縄では実行できないと感じ始めているからではないか。)
いずれにせよ市場にとっては、期待感の後退、不信感の増大に繋がり、反応としてはリスク・オフでしょう。市場の動きを振り返ると、米国株は12月半ばから頭打ち、米国長期金利は12月半ばから低下基調、ドル円は年初に2番天井をつけてから急速に円高ドル安進行となっていますので、すでにリスク・オフ方向への動きが始まっているともいえるでしょう。今週末の大統領就任式以降、トランプ大統領の言動次第でその動き(ドル安株安債券高)が強まる可能性に留意すべきだと思います。