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2017年1月25日のマーケット・コメント

東芝(6502)の行く末を予想する

 

東芝(6502)に関する悪材料が後を絶ちません。今日は水力発電プラント向け製品の検査データ捏造が報じられました。何よりも東芝の事態を深刻にしているのが、5,000億円とも7,000億円とも言われる、米国原子力発電事業での損失です。2016年3月末時点の東芝の自己資本は3,289億円でした。不正会計処理に絡む減損処理で、すでに売上高5兆円を超える規模の企業としては、過小資本状態です。原子力事業の損失を除く、今期の予想当期利益は1,450億円ですので、今期末の自己資本は損失額が5,000億円だと(3,289+1,450-5,000)=261億円の債務超過、7,000億円だと2,261億円の債務超過に転落します。

 

資本調達が必要になるわけですが、東芝の場合、不正会計事件を受けて現在「特設注意市場銘柄」に指定されており、公募での増資はできません。第3者割り当て増資は可能ですが、原子力事業からの更なる大規模追加損出を抱えている状態では、東芝本体への第3者割り当て増資を引き受ける買い手は存在するはずがありません。また、東芝に融資を行なっている銀行団は、2月末までの融資継続には合意しましたが、3月以降は再度判断するとしています。残る資金調達手段は資産売却が考えられますが、数千億規模が調達できる資産は子会社株売却などでは到底賄えず、本業に手をつけざるを得ません。

 

そこで浮上しているのが、全社の営業利益の80%以上を稼いでいる業績好調な半導体部門を分社化、100%子会社化し(仮称「東芝半導体」とします)、その一部を他社に売却することにより資金調達する、という手法です。半導体部門の事業価値は1兆5,000億円と言われており、30%の株式を売却すれば4,500億円が調達できます。報道では2月中にも入札実施されています。

 

しかしそれだけでは今期末の債務超過転落を回避するだけの急場しのぎに過ぎません。東芝には5つに事業部門があります。半導体事業中心の「ストレージ&デバイス部門」の他に、原子力発電関連事業中心の「エネルギー部門」、社会インフラ事業中心の「インフラシステム部門」、家電中心の「リテール&プリンティング部門」、法人向けシステム開発事業中心の「インダストリアルICTソリューション部門」です。なお、「リテール&プリンティング部門」以外の4部門は社内カンパニーとなっており、「リテール&プリンティング部門」は、東芝ライフスタイル株式会社としてすでに分社化され、2016年6月30日に中国の美的集団が80.1%の株式を買い取っています。

 

さきほど「原子力発電事業も分社化を検討」との報道がありましたが、今後考えられるのはまさにそれです。巨額追加損失のリスクは原発部門に集中しているため、分社化し売却できれば東芝全体の破綻は避けられます。しかしその巨大リスクがあることが明らかな状況で、経済合理的に考えて、原発会社を買い取る投資家が存在するとは考えられません。フランスの原発会社アレバも経営危機に陥り、仏政府が50億ユーロの増資を引き受けて救済したように、東芝の原発会社を救済できるのは日本の公的資金しかないでしょう。

 

同様に経営不振に陥ったシャープ(6753)も、最終的にはホンハイの子会社となりましたが、日本政府は公的資金を注入しようとしていました。したがって、東芝への公的資金注入も十分に可能性があると思います。ただし、東芝の場合、公的資金注入について国民の支持を得るためのハードルは、相当高いでしょう。シャープの場合は「設備投資リスクを取って勝負に行ったが、価格競争に飲み込まれ業績大幅悪化」というだけだったのに対し、東芝の場合は「損失を隠すために不正会計処理を行なった上に、米国子会社(ウェスティング・ハウス)に対するガバナンスが甘かった結果、巨額損失発生」です。つまり、悪意や不注意という要素が存在します。国民感情としては「なんでそんなひどい経営体質の企業を税金で助けなければならないのか」でしょう。

 

したがって、東芝への公的資金注入への国民の支持を得るためには、JALの時と同様に、「一旦上場廃止にして、株主責任を取ってもらう(株価はゼロになる)」ことと「歴代の東芝経営陣を刑事告訴する」ことは最低必要になるのではないかと考えています。

 

「だったらまだ信用でカラ売りできる(売り禁止にはなっていない)ので、東芝をカラ売りして放置すればいいじゃないか」ということになるのですが、1月16日時点であった大量の貸し株が1月23日時点でまったく無くなっています。これは先週中にヘッジファンドが大量に東芝株を借り入れ、カラ売りを行なった、ということを意味します。もし株の貸し手が返済を迫った場合、問答無用で買い戻さなければならなくなります。年末年始のタカタ(7312)の急騰劇は記憶に新しいでしょう。その時のタカタはすでに信用で売り禁止で、カラ売りは出来ない状態でした。

 

ではどうすればいいのか、テクニックがあります。信用で売り禁止になっていないうちに、東芝株を信用で両建て(同株数の買い持ちと売り持ちを作る)し、問答無用の買い戻しで株価が急騰したら、買い持ちだけを決済することで、たとえその時に信用で売り禁止になっていたとしてもカラ売りポジションが作れる、という手法です。