7カ国入国禁止大統領令を受けて「リスク・オフ」を推奨
1月27日にトランプ米大統領は、シリア、イラク、イラン、スーダン、リビア、ソマリア、イエメンからの入国と、すべての国からの難民の入国を、一時禁止とする大統領令に署名しました。これを受けて、米国内からも海外からも非難の声が上がっていますが、最大の問題は入国禁止の対象となる人の定義がはっきりしていない事です。
もし対象が「指定された7カ国の国籍を持つ人」だった場合、グローバルなビジネス展開を行なっている米国企業は大きな影響を受けます。それらの国籍を持つ従業員が、米国に入国できなくなってしまうからです。すでにグーグルやフェイスブックなどの経営者が、この大統領令への強い懸念を表明するとともに、対象国に出張中の従業員を直ちに帰国させるなどの社内対応を始めています。経済的効率が損なわれることになり、企業業績には悪影響が懸念されます。
また、これまで難民を積極的に受け入れてきたドイツのメルケル首相は、公然とトランプ大統領を批判、隣国カナダのトルドー首相も難民の積極受け入れを表明し、米国との国家関係が悪化することが懸念されます。さらに、グローバル展開する米国主要企業は、この政策を支持するか批判するか、どちらかを表明することを事実上迫られており、批判した場合、もし批判したことを受けて政権から攻撃される事態に発展していくとすれば、企業にとって前代未聞の不測の悪影響が発生する事になります。
一方で、もし対象が「指定された7カ国からの渡航者」だった場合、指定国以外の国を経由すれば米国入国が可能ということになり、事実上、何の効力も持たないことになります。その場合は、「イスラム教徒の入国を禁止する」という選挙中の公約を形にしたかっただけで、公約違反と評価されないようにするための単なる「格好付け」ということになります。しかし、それがあからさまになってしまうことをトランプ大統領は嫌うと思われ、指定国以外の国での滞在期間に条件を設けるなど、完全な「ザル規制」となることは回避してくるでしょう。その場合、入国審査が煩雑化することになり、関係職員の増員が必要になるなど、経済的負担増加が発生します。
いずれにせよ、きわめて不透明感が強く、経済的影響はマイナス方向であることを踏まえると、市場の反応は「リスク・オフ」だと思われます。本日の日本市場では、まだはっきりとそのような反応とはなっていませんが、米国市場がそのような反応になれば日本市場も追随すると思われますので、「リスク・オフ」への対応を早めに行なうべきでしょう。
ドル円の115円、日経平均の19,500円はやはり重かった、という展開になりそうです。