昨日の米国市場の動きから占う雇用統計への反応
昨日日本時間の21時15分に米国でADP雇用統計が発表されました。内容は事前予想通りの13.5万人増で、発表を受けてドル円は発表に向けた警戒で112.60円から112.32円まで軟化していた部分を戻す動きとなりました。更にその後日本時間23時にISM非製造業景況感指数が発表され、内容が59.8と事前予想の55.5を上回ると、ドル円は112円90銭台まで急進し、その後は112.70-112.90円のもみ合いとなりました。米国10年国債利回りは2.32%から2.30%まで低下後、2.34%まで上昇した後2.32%に戻っており、ドル円との相関関係はきっちり維持されています。
米国10年国債利回りの変動は、もっぱら10年物価連動債利回りの変動によってもたらされており、BEI率はほとんど変化していません。市場が織り込む12月利上げ確率は60%台まで上昇しています。これらのことを踏まえて、今週末の米国雇用統計に対する市場反応を考えます。
1.ADP雇用統計の実績が、ハリケーンの影響を織り込んだ13.5万人増(前月は23.7万人増)の予想通りだったことから、明日の非農業者部門雇用者数変化の8.0万人増(前月は15.6万人増)という弱い予想が現実味を帯びてきた。今回は弱気バイアス(予想よりも弱くても市場はネガティブ反応しない)が市場に存在するとの意見もあるが、市場反応は実績を素直に予想と比較したものになる。
2.最近の金利変動はもっぱら12月利上げ確率をめぐる物価連動債利回り変化が要因になっている。FRBの最注目要因が雇用状況からインフレ見通しに移行しており、雇用者変化が予想と大幅に異ならない限り、どちらにせよ金利変動、ドル円変動は限定的。
3.平均時給の予想は、前月比で0.3%増(前月は0.1%増)、前年比で2.5%増(前月は2.5%増)と、ハリケーンという特殊要因を加味しない数値。FRBがインフレ動向を重視していることを踏まえれば、平均時給の振れの方が雇用者数変化よりも金利動向、ドル円動向に大きな影響を与えうる。米国10年国債利回りに±0.05%のインパクトがあるとすれば、ドル円には±0.75円の変動要因。
平均時給が上ぶれする可能性は低いと思うものの、もし上ぶれてドル円が直近の戻り高値113.26円を越えて113円台半ばに達するようなら、もう一段売り乗せ対応でいいと思います。もし金利が2.4%を明確に越えて行くとしても、それは強いインフレ統計がいくつかそろってBEI率(現在1.86%)が上昇する必要があり、そうなるとしてもそれには時間がかかり、目先そうなることはないからです。