いいとこ取りの米国株市場vsトランプリスクにおびえる為替市場
先週金曜日に、1月の米国雇用統計が発表されました。非農業部門雇用者数変化は227,000人増加と事前予想の180,000人増加を上回った一方、平均時給は前月比0.1%増加と事前予想の0.3%増加を下回りました。発表を受けてNY市場では、株上昇、ドル小幅下落、長期金利小幅低下という反応になりました。つまり、米株市場は非農業部門雇用者変化に注目して、発表内容を「良い」と捉え、為替市場と債券市場は平均時給に注目して、発表内容を「やや悪い」と捉えたということです。
この反応の背景には、先週のトランプ大統領の「ドル高けん制発言」を受けて、為替市場がトランプリスクに敏感になっているのに対し、米国には特に言及がないことに加え、金融規制緩和の話がでたことから、米国市場ではトランプリスクをまったく感じていないどころか、トランプメリットと感じている、ということではないでしょうか?
しかし、米国株式の上昇が、米国企業の将来の業績拡大を反映しているとすれば、それは米国経済の一層の拡大に繋がり、さらに期待インフレ率の上昇に繋がります。期待インフレ率の上昇は米長期金利の上昇に繋がり、それはドルの上昇につながるため、いずれ「株高、ドル高、債券安」(「株安、ドル安、債券高」)というトランプラリー本来の相関に戻る可能性が高いと思われます。先週金曜日の「株高、ドル安、債券高」は長くは続かない、ということです。
昨年12月半ば以降、各市場は世界的にボラティリティが低い状態(レンジ内での動き)になっていますが、レンジを抜けて動き始めるきっかけになる可能性がもっとも高いと、私が感じているのが、ドル円の円高ドル安進行です。1月23日付のコメントでお伝えしましたが、シカゴ筋ポジションは、1月31日時点で58,331枚の円ショートと、徐々に減っては来ていますが、依然として高水準のままです。平均簿価は114円台後半と推定され、現在のドル円の水準では2円以上の含み損です。
つまり、ある臨界点を超えて円高ドル安進行した場合、平均的なシカゴ筋投資家はポジションを投げる必要が出てきます。今週末の日米首脳会談で、トランプ大統領から日本の金融政策に対して批判的な発言でもあろうものなら、円ショートの投げが現実化しそうです。その後もトランプリスクが消えることはないため、米国での財政出動や減税の話が具体化していくまでは、大きく円安ドル高が進行しにくい状態が続く可能性が高いでしょう。臨界点だと思われる112円を割り込んだ場合、下値めどは110円(一時的に110円割れもあるかもしれません)、上値めどは115円です。