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2017年3月27日のマーケット・コメント

財源の壁に直面するトランプ政策の実行

 

トランプ大統領が掲げる政策の実行に、早くも暗雲が立ち込めてきました。「真っ先に実行する」政策の一つのはずだったオバマケアの見直しですが、その代替法案に対する共和党内での十分な賛成が得られず、下院での採決断念に追い込まれてしまいました。

 

いまさら言うまでもなく、トランプ政権が掲げる政策の目玉は大型減税とインフラ投資(財政出動)ですが、大型減税は歳入減少、財政出動は歳出増加であり、財政悪化要因です。共和党保守派議員は、小さな政府を指向することによる財政健全化を支持していますので、財政悪化を補う要因すなわち財源の確保がなければ、上記政策の実行は不可能です。財源を国債増発に求めては財政健全化にならないばかりか、3月16日から2年間適用外とされていた債務上限が復活し、国債増発にはまず債務上限引き上げが可決されなければならず、共和党保守派議員がそれに賛成するとは思えないため、事実上その選択肢はありません。

 

オバマケア代替法案により、今後10年間で約3,400億ドルの財源が確保されるはずでした。それが失敗に終わり、税制改革法案を優先すると言っています。税制改革で最大の財源になる見込みなのが、米国企業が海外に留保している利益を米国に還流させれば低位な税率を適用するという、いわゆるレパトリ減税です。現在、その海外留保利益の規模は約2.5兆ドルに上ります。

 

2005年にもレパトリ減税は行なわれていて、当時約6,000億ドルあった海外留保利益のうち、約60%に当たる3,620億ドルが米国に還流しました。今回も同様であるとすれば、2.5兆ドルの60%の1.5兆ドルが還流し、税率を10%にすれば1,500億ドルの財源となります。しかし、2005年の場合は税率が35%から適用期間は5.25%となり、適用期間終了後は35%に戻るという状況だったのに対して、今回は35%が10%になるが、いずれ法人税率は15%に引き下げられるという状況ですので、米国企業に2005年当時と同じインセンティブが働くか疑問です。ふたを開けてみたら試算を大きく下回った、という可能性も否定できません。

 

もう一つ共和党内で議論されている改革案が、輸出業者に対する税率を引き下げ、輸入業者に対する税率を引き上げるという、法人税の国境調整です。巨額な貿易赤字国である米国は、これにより大幅な税収増加が図れる、ということなのですが、これにも大きな問題があります。廉価な生活必需品など輸入品以外の選択肢がない場合、税率引き上げを受けて輸入業者は販売価格の引き上げを行なわざるを得ず、結果として増税負担は米国民が負うという、実質的には消費税引き上げという結果になりかねないのです。

 

トランプ大統領は、これまで1対1の交渉術に長けることで実業家として成功を収めてきました。しかし政治家には多面的な調整能力が不可欠です。予算をめぐる今後の動向で、その調整能力の優劣がはっきりします。期待を裏切らないことを祈ります。